紅葉も終わると、忘年会の季節。飲酒の機会も多くなりますね。酒は百薬の長といい、体にとって様々な効果が期待できたり、人間関係を円満に保つコミュニケーションとしての役割としても欠かすことは出来ないものですが、過度の飲酒が長年にわたると、アルコール依存症になってしまいます。今回は、アルコール依存症を始めとする『依存症』についてお話してまいります。

まず、依存症とは何かを説明いたします。

●アルコール依存症:飲まずにはいられない

依存症とは、アルコールだけに限らず、タバコのニコチン、シンナー、覚せい剤、睡眠薬といった物質の乱用に対して使われます。止めようと思ってもやめられない状態をさしますが、精神依存と身体依存の2つの面があります。

=精神依存=
精神依存とは、欲しくてたまらなくなることで、アルコールの場合では、アルコールを飲みたくてたまらなくなり、アルコールが生活の中で占める比重が大きくなります。また、アルコールを手に入れようと探しまわるというような行動もしばしばみられます。

=身体依存=
少し難しい話になるのですが、身体依存とは、その物質を乱用した為に、体に生理的変化が生じ、体がその乱用されている物質を必要とし、使用が急に中断されると、体に異常が生じます。これは、離脱症状と呼ばれます。アルコール依存では、飲酒を中断すると、手の振るえ、いらいら、不眠、吐き気、幻覚などが見られます。

次に、過度の飲酒が依存症へと至る具体例を見てみましょう。

●具体例:毎晩飲み続けると

ある、23歳の大学院生(女性)が、最近の学業の不振と普段の明晰さが見られないのを指導教授から心配され、精神科に行くのを薦められました。診察にいらしたその女性から話を聞いていくうちに、彼女の飲酒問題が判明しました。また、家庭内でも、両親から厳しく、酒を止めるようにいわれていたようでした。

彼女の飲酒の状況は、過去5年間、毎晩、ワインをボトル1本半から2本を飲酒しているような状況でしたが、ここ2年は、かつてと同じ効果を得るために、もっと、もっとアルコールを飲む必要が生じ、家族とすごす時間もおろそかになり、車にのって遠くまでアルコールを買いに行くようにもなりました。彼女自身何度も、酒量を減らそうとして、毎晩、グラス2杯までと上限を決めてみても、飲み始めると、ストップが効かず、9杯、それ以上飲酒してしまいます。

彼女の普段の生活は、勉強も一生懸命がんばっていて、恋人との関係もうまくいっているのですが、依存にまでいたるアルコールの飲酒歴は、典型的です。
この例で、彼女が過度に飲酒する必要が生じたのは彼女の体にアルコールへの耐性が生じたためで、身体依存が形成されています。また、アルコールを求めて、ドライブしてしまうのは精神依存ですね。このように、精神依存のみならず、身体依存も顕著になると、アルコール依存症と診断されます。

では、アルコール依存症と診断されたときの治療はどのようにされるのでしょう?

●治療:アルコール依存症と診断されたら

もし、アルコール依存症と診断された場合、介入、解毒、リハビリの3つのステップを行います。

1.介入
介入とは、患者さんにアルコールの害と直面してもらい、このまま、治療を受けず、アルコールを飲み続けていくと、うつ病などの感情障害、痴呆、アルコール性精神障害、肝臓障害といった悲惨な結末をたどることを認識させます。(患者さんは、もともとアルコールの害を認めていないことが多いのです。)酒を止めようというモチベーションを高めるのが目的です。

2.解毒
解毒とは、アルコールを体からぬくことです。長期間の飲酒の後、いきなり断酒すると、離脱症状が出現します(依存症の説明で述べたように、程度の差はあります)。

アルコールと生理作用の似ている精神安定剤を、アルコールの代わりとして、投与することによって、離脱症状をコントロールします。

3.リハビリ
リハビリは、断酒を継続するモチベーションを維持し、アルコールなしの生活に慣れ、飲酒の再開を防止するのが目的です。仲間同士でサポートしあうアルコール・アノニマス(AA)といった自助グループもあります。

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飲み過ぎは体に悪いのは周知の事ですが、その危険性は見過ごされがちです。多量に飲み続けていくと、上記のように依存症となり、精神、身体面でさまざまな問題が生じます。もしも、酒を通じて、トラブルにあったり、飲酒量が多く、体調の悪い人は、精神科で相談されてみたらどうでしょうか。また、ご家族や、知人で飲酒に問題があると思われる方がいらしたら、精神科のコンサルトを薦めてみるのもどうでしょうか。


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