(記事掲載日/2007.08.12)

今週の政治用語解説は「テロ特別措置法」についてです。制定された2001年当時は大きな議論を巻き起こした法律ですが、今後議論が再燃しそうな様子、改めて基礎知識を抑えておきましょう。

「9.11」を受けて作られた法律

アフガン軍事攻撃
アフガニスタン・カンダハルにおけるアメリカ軍(写真はアメリカ政府サイトより)。
この法律は、2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ、いわゆる「9.11(ナイン・イレブン)」によって制定されることになった法律です。

この法律の正式名称が「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる軍事行動等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法 」(長い!下線はガイドによる)ですから、そのことは明確です。

「9.11」を受けて行われることになったアメリカのアフガニスタンへの軍事行動。これを日本が支援するため制定されたのがこの法律です。

アメリカは西側同盟国に、アフガン軍事行動への参加を呼び掛けました。日本に対しても、当時のアメリカ政府高官が「ショー・ザ・フラッグ」という言葉で協力を要請したと報じられました。

これを受けて、当時の小泉内閣はアメリカとの同盟関係を重視する立場から自衛隊による支援を可能にする法律案を国会に提出。こうして2001年11月2日にテロ特別措置法は成立します。

そして自衛隊の艦船がインド洋に向かい、現在に至るまで、アフガン軍事行動を行うアメリカ軍はじめ多国籍軍の船などに対する給油など、アフガン軍事行動の「後方支援」を行っています。

なぜ特別に法律を作ったのか?

インド洋への自衛隊派遣について、特別な法律を作らなければならなかった理由はなんだったのでしょう。

そもそもインド洋での後方支援は、国連を中心としたPKO(国連平和維持活動)への参加ではありません。PKOへの参加、自衛隊派遣ということであれば、すでに日本は1993年「PKO協力法」を制定していたので、問題はありませんでした。

しかしインド洋での後方支援はアメリカ軍を中心とした「多国籍軍」による、アフガンのタリバン、アル・カーイダ(アルカイダ)軍事行動へのものです。そのため、PKO協力法が適用できず、別途法律が必要だったということです。

1999年に制定された「周辺事態法」の適用はできなかったのでしょうか。アフガン情勢が「日本の周辺事態」という解釈も難しかったと思われますし、そもそもこの法律はアメリカだけへの支援を行う法律でした。イギリス軍などへの支援も必要だったアフガン軍事行動において、この法律を適用することは難しかったのです。

これから国会で話題になる理由とは?

押しボタン
参議院の議席にある採決用の押しボタン。果たして参議院は延長賛成の白いボタンを押すか、反対の青いボタンを押すか?
テロ特別措置法は制定から6年で効力を失う法律として制定されました(このような法律を作ることを「時限立法」といいます)。

つまり、2001年11月2日に制定されたこの法律は、2007年つまり今年の11月1日をもって効力を失い、事実上廃止されるわけです。ただし、国会が認めれば2年単位で延長できることになっています。

政府は、延長を考えています。アフガンでのタリバン、アル・カーイダの活動は最近盛り返しを見せており、アフガン政府やアメリカなど多国籍軍もてこずっているところです。ここで6年きたから日本は撤退、というのは難しいし、アメリカとの同盟関係にとってもよくないと考えています。

しかし野党第一党である民主党は、法律延長に対して慎重です。反対するのではないかともいわれています。民主党はじめ野党には自衛隊派遣に反対する勢力が多いこともありますし、延長問題を安倍政権の揺さぶりに利用したいということもあるようです。

参議院で野党が過半数を握っている以上、衆議院で延長を議決しても、参議院で否決されてしまい、延長が困難になるという可能性があります。

参議院で否決しても、衆議院が3分の2以上の多数で再可決すれば延長法案は成立します。しかし、再可決して法案が成立したのは1953年以来、例がありません。再可決してしまえば、安倍政権のイメージは「横暴」だとますます批判が高まるかもしれません。

はたして自民党と民主党の協議がうまくいき延長が可能になるのか、それとも国会の大きな混乱が生まれてしまうのか、注目されるところです。

と同時に、国民の側も、アフガン軍事行動のための自衛隊後方支援をこれからも行って日米同盟をしっかり維持するべきか、平和主義が逸脱しないように当初の期限通り撤退すべきか、しっかり検討・議論することが必要となるでしょう。

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