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日曜日の政治用語:アセアン地域フォーラム

今週は今月初めに開催されたアセアン地域フォーラム(ARF)についてお話ししていきます。アジア・太平洋地域の紛争をゆっくりと解決していこうとする試みです。

執筆者:辻 雅之

(記事掲載/2007.08.05)

毎週日曜日にお送りしている政治用語解説。今週はこのあいだ行われた「アセアン地域フォーラム(ARF)」についてお話していきましょう。アジア・大平洋地域の安定にとって欠かせない存在となっています。

「自由に討論する」場としてスタート

アセアン地域フォーラム
アセアン地域フォーラムの参加地域・機関
アセアン(ASEAN・東南アジア諸国連合)地域フォーラムとは、アセアンを中心として、アジア・太平洋地域の安全保障問題を、外相クラスの人々が「自由に討論する場」として設けられました。

なので、アセアン地域フォーラムはあくまで議論する場であり、事務局もなく、組織というわけではありません。

1994年、バンコクで初会合が行われ、まずは第1段階である「各国の信頼関係の醸成」を目標にして、話し合いが進められてきました。1999年からは、第2段階である「予防外交」、つまり紛争を予防する外交をいかに展開するかを中心に話し合いがもたれています。

そして最終段階として、アジア・太平洋に存在する「紛争解決」を、この会議を中心に徐々に進めていこうとしています。

このように3段階に分けてゆっくりとアジア・太平洋地域の平和の構築をめざしているのは、「内政干渉」を嫌う軍事独裁国家、具体的にはミャンマーや北朝鮮といった国々に対し、できるだけ反発を招かないよう、慎重にことを進めていこうということがあるからです。

アセアン地域フォーラムのメンバー

アセアン地域フォーラムは、アジアにとどまらず、さまざまな国が参加しています。

つまりアセアンの加盟国10カ国(ブルネイ、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン、シンガポール、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジア)はもとより、日本をはじめ、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、北朝鮮、中国、ロシア、パプアニューギニア、インド、モンゴル、パキスタン、東ティモール、バングラデシュ、そしてEUも代表を送っています。

また、今回の閣僚会合からスリランカが27番目の参加国として認められました。

特に北朝鮮やミャンマーなどと、アメリカや日本が対話できる機会としては極めて重要です。もちろん、日本にとっては中国やロシア、インドなどとも定期的に会合できるメリットは大きなものがあります。

フォーラムのプロセス

現在は、主に3つのレベルでフォーラムが行われています。

具体的な活動をしている官僚、日本でいうと省庁の「課長級」の官僚たちが参加し、討議をするものを「ISG会合」といいます。秋と春の年2回実施されています。

さらに、事務官僚レベルのトップが集まるのが「SOM(高級事務レベル)会合」です。日本の省庁でいうと、事務次官の下の「局長級」が参加します。毎年春に行われ、閣僚会合の準備をします。

そして、「閣僚会合」が毎年夏に行われます。もちろん、外相など閣僚が参加します。議長はその年のアセアン議長国の外相が務めます。ここで、会議の成果を示す議長声明ほか、各種の声明が発表されます。

また、その他の具体的分やについての政府間会合、民間を交えた専門家レベル会合なども開かれていて、閣僚会合に反映されるようになっています。

APECとの違い

一方、アジア・太平洋地域にはもう1つAPEC(アジア・太平洋経済協力会議)というものがあります。

アセアン地域フォーラムが主に安全保障問題を扱っているのに対し、APECは経済的な交流を話し合う場として機能しています。

参加国も多少違いますし、経済問題会議ということで、国家ではない香港や台湾も参加が認められているのがAPECです。

今後のアセアン地域フォーラムの課題

アジアの安全保障問題
主なアジアの安全保障問題。
地域フォーラムは、北朝鮮やミャンマーといった独裁国家を孤立させないで会議に参加させるという意味では、一定の成果をあげているといえます。

しかし、北朝鮮の核問題は依然として解決されていませんし、そして東南アジアで頻発するテロや反政府ゲリラとの衝突、さらには南沙諸島をめぐる中国と東南アジア諸国との対立も、いぜんとして残っています。

しかし、地域フォーラムは、あせらずまずは信頼醸成、紛争予防に重点をおこうとしています。アジア・太平洋地域は多様で、衝突が起こりやすいところ。このような地道な取組みが行われていること自体、評価していいのではないでしょうか。

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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