2ページ目 【借款から「人への援助」へ、変わりつつある日本のODA】
3ページ目 【始まっているODA改革、そしてこれからの日本ODA】
【借款から「人への援助」へ、変わりつつある日本のODA】
二国間援助──無償資金援助、技術協力、貸付
よく「円借款」という言葉を耳にするが、日本の二国間援助において、借款(貸与)の比率はそれほど多くない。 |
直接援助するかたちの援助を「二国間援助」といいます。二国間援助は、さらに3つにわけられます。
ひとつは、無償資金協力です。簡単にいうと見返りもなく資金を提供するものです。2004年度の日本の二国間援助のなかで無償資金協力が占める割合はおよそ34%となっています。
2つめは、技術協力です。海外青年協力隊がアフリカで井戸を掘っている映像などを目にしたことがあるでしょうか。このような貧困対策から、研修員を受け入れて最先端の技術を教えることまで、多岐の分野にわたる援助形態です。
また、これら技術協力は無償で行われる援助です。
技術協力の日本による2004年度二国間援助に占める割合はおよそ49%です。ODAというと橋を作ったり道路を作ったり……というイメージがありますが、現在の日本のODAは「人間」の育成により力を入れていることがわかります。
3つめが、政府による貸付、いわゆる借款です。これがODAといわれるためには、金利が低く、返済までの期間が長い、「ゆるやかな条件」でなければなりません。また、貸付のうち、円で貸し付けられるものがいわゆる「円借款」です。
「日本のODAは貸付が多い」とよくいわれますが、現在その割合はかなり低下しています。2004年度においては日本の二国間援助のなかで無償資金協力が占める割合はおよそ18%と、それほど多くはありません。また、貸付条件のゆるやかさも他の先進国なみ、もしくはそれ以上にゆるやかだったりします。
多国間援助──国際機関への資金提供
ODAは国際機関を通じて行われるものもある。日本もかつては世界銀行など国際機関の援助を受けて高度成長の土台作りを行っている。 |
多国間援助の中心となるのが世界銀行グループです。世界銀行は正式には国際復興開発銀行(IBRD)といい、国連専門機関です。世界銀行の他にも国連開発計画(UNDP)、国連児童基金(UNICEF)、アジア開発銀行(ADB)などが資金援助の受け皿機関となっています。
こうした受け皿機関のなかで、日本の資金拠出額もまた年々少なくなっています。UNDPの場合、2000年度では1位だった拠出額は、2006年度には6位に後退してしまいました。
日本からの拠出額の減少は、その機関での日本の発言力の低下につながっていきます。「他国にまかせておけばいい」という考え方をする人もいますが、日本が援助計画に関与できなくなることによって、日本の利益が損なわれてしまう可能性もあることも考慮しなくてはならないでしょう。
タイドとアンタイド
ODAを行う国が、受ける国に対して、援助資金を使うときに自分の国から資材や機材などの調達を義務づけて資金提供することをタイドといいます。日本のODAはタイドでない、すなわちアンタイド率が高いことが特徴です。先進国(DAC:開発援助委員会加盟国)平均で85%ほど、アメリカのODAでは30%ほどしかないアンタイド援助ですが、日本は97%がアンタイド援助となっています。
日本のアンタイド率の高さは今に始まったことではありません。当初はやはりアンタイド率は低かったのですが、日本の経済成長が一段落した1972年、アンタイド化の促進が閣議決定されました。以来、日本のODAのアンタイド率は高くなっています。
ODAによるNGO支援
草の根レベルの援助をしていくうえで、開発途上国で地道な活動をしているNGOと連携していくことは、非常に重要なことです。日本では1980年代から政府とNGOの協議が行われはじめ、90年代後半からその関係はさらに密になっています。
2002年初頭、アフガニスタン復興をめぐるNGOの扱いについて端を発した「ムネオ事件」がありますが、裏を返せば、NGOと政府の関係が緊密になっていたからこそおきた事件だったともいえます。
現在、二国間援助の一環としてNGOへの補助金交付が行われており、2007年度予算では総額130億円ほどになっています。
日本のODA全体に占めるNGOへの補助は1.1%で、これはまだ各国から比べると低い水準です(DAC平均2.2%)。草の根レベルで「人間の安全保障」を行っていくために、今後さらにNGOへの補助、援助はふえることになるでしょう。
そしてこれからの日本のNGOは、いったいどのようになっていくのでしょうか。次ページでお話していきます。