(記事掲載/2007.02.11)

毎週日曜日掲載の「日曜日の政治用語」。今年も中国の国会に当たる「全人代」が開催されます。全人代を軸にして、中国の政治制度についてお話します。

三権分立をとらない中国の最高機関

中国の政治機構
中国には三権分立の考え方は採用されておらず、全人代が全ての権力の上に立つよう構成されている。
中国は「社会主義」の国家です。社会主義では、「労働者(プロレタリアート)独裁」という理念のもとで、労働者=人民の意思が最高の意思と考えられているため、人民の会議が最高機関とされ、日本やアメリカのように権力を分け合うという「三権分立」の考え方を採用していません。

このような政治制度のことを、「民主集中制」あるいは「権力集中制」といいます。
旧ソ連は、人民会議の意味である「ソビエト」に全ての権力を集中させるということから、「ソビエト人民共和国」と名乗っていたのですね。

中国では、人民の代表とされる「全人代」に全ての権力が集中しています。全人代、正式には「全国人民代表大会」といいます。代表の任期は5年で、解散はありません。

全人代は、立法権を独占しているほか、国家主席の選出、首相に当たる国務院総理の任命、最高人民法院・最高人民検察院のメンバーの選出など、大きな権限を持っています。

全人代が開かれないあいだ機能する「常務委員会」

しかし、全人代は年に1回しか開かれません。全人代が開かれていないあいだ、立法などはどうするのでしょう。

そのために、全人代に「常務委員会」が置かれ、ここで立法活動が行われます(ただし、憲法改正はできない)。法律の制定のほか、条約の承認など、幅広い立法活動が行われています。

ある意味、中国の本当の意味での最高機関はこの常務委員会であるといえるかもしれません。

全人代代表の選出方法

中国の人民代表大会
一応の人民代表大会の関係を現わした図。地方への監視体制を強め、地方での汚職などを減らすことが期待されているが……。
全人代は、国会に当たるといっても、その代表そのものを中国国民が直接決めることはできません。

中国の行政区分はおもに省(または直轄市)-県-郷(または市など)からなっていますが、このクラス(級)ごとに人民代表大会が作られており、郷の代表として人民から選ばれた代表が集まって県級人民代表大会の代表を決め、さらにこの県級人民代表大会が省級人民代表大会の代表を決め、さらにこれが人民代表大会の代表を決めるようになっています。

こうした意味で、中国では国家規模の大きな国民選挙が行われることはありません。また、低い級の代表大会には、指導政党である共産党が深く介入しているので、選挙選が活発になることはありません。

その他、全人代には香港・マカオの特別行政区の代表、少数民族の代表、人民解放軍の代表が加わります。およそ3000名の代表によって、全人代は構成されています。

ラバースタンプからチェック機関へ

「中国の国会」とはいえ、全人代はかつては名目的な機関とされていました。

つまり、指導政党である中国共産党の決定事項について、単に承認の判子を押すだけの機関、「ラバースタンプ」であると、よく批判されていました。

しかし、中国で格差問題が深刻化したり、共産党幹部の汚職問題などによる国民の不満が高まりはじめている現在、全人代をしっかりした「チェック機関」にすべきだという動きもみられつつあります。

2007年から施行されることになった「監督法」では、全人代の各機関への監督権が明確にされ、省級・県級人民代表大会は政府やそれより下の級の人民代表大会が行った決定を取り消す権限を持つことが定められました。

これによって地方の汚職をなくし、国民の不満を解消しようということですが、はたしてうまく機能するようになるか、今後に注目したいと思います。

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