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司法権と「裁判官の独立」(3ページ目)

司法権の独立、という言葉はよく耳にされると思います。それでは「裁判官の独立」は? ……大人のための政治教科書シリーズ、今回は裁判官にスポットを当てて解説してみました。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【司法権の独立と「裁判官の独立」】
2ページ目 【裁判官をすぐに辞めさせることはできない】
3ページ目 【裁判官への任命とその任期とは】

【裁判官への任命とその任期とは】

裁判官のほとんどは最高裁判所が選ぶ

判事と判事補
裁判官はまず判事補に任命され、その後判事になる。判事補が1人で裁判を行うことはできない。
最高裁判所の裁判官は内閣が任命し、その他下級裁判所(高等・地方・家庭・簡易)の裁判官は「最高裁判官の指名した名簿」によって内閣が任命することになっています。

つまり、実質的にほとんどの裁判官は最高裁判所が任用を決定しているのですね。

新任の裁判官は、司法試験に合格し、司法修習を終えた者から任命され、まずは「判事補」になります。判事補を10年勤めると判事に任命される資格を得ます。判事=裁判官、では必ずしもないのです。

裁判官の指名については、最高裁判所に「下級裁判所裁判官指名諮問委員会」というものがあり、ここで決定されます。この委員会には裁判官、弁護士、検察官、学識経験者がつきます。

そのため、必ずしも任官希望を出した司法修習生が全て任命されるとは限りません。指名されない人もでてきます。また、司法修習のなかで、教官が任官を断念させる「逆肩たたき」がある、ともいわれています。

ほとんどの裁判官には「任期」がある

さて、下級裁判所の裁判官には憲法で任期が定められていて、10年となっています。もちろん、再び任命(再任)されることが普通で、多くの裁判官は再任の希望を出します。

それを先ほどの「下級裁判所裁判官指名諮問委員会」が審査し、再任の適否を決定します。あまりいませんが、この審査によって「再任不可」となった裁判官はいて、議論を生んだことがありました。

もっとも議論になったのが1971年、最高裁判所が「青年法律家協会」に入っていた判事補を再任不可としたことでした。この団体を「左寄り」と考えていた最高裁判所の政治的判断ではないかといわれました。

再任されない裁判官の数は少ないのですが、実際には「上からの働きかけ」により、再任を断念する裁判官も少なくないともいわれています。

裁判官の定年

日本の裁判官には、定年があります。

裁判所法によって、最高裁判所と簡易裁判所の裁判官は70歳まで、その他の裁判官は65歳になると任期途中であっても退官することになっています(第50条)。

もっとも最高裁判所の裁判官を70歳までやりとげるのはなかなか大変なようです。ひとりで100件をこえる訴訟・事件を扱っているといわれ、失明寸前にまでなった人もいるようです。

「特別裁判所」の禁止

海難審判庁
海難審判庁は確かに裁判のようなことを行うが、決定への不服申し立てが許されている点から特別裁判所とはいえない。
司法権が独立するためには、「裁判所以外で裁判を行わない」ということが必要になります。そのため憲法では裁判所以外に「特別裁判所」なるものを作って裁判を行うことを禁止しています。

ただし、同時に「前審」として行政機関などが裁判のようなことを行うことは認められるとされています。「前審」とは、その「裁判(審判ということが普通)」の決定に不服があれば、「終審」裁判を行うふつうの裁判所に訴えることができる「裁判」のことをいいます。

海の事故について扱う海難審判や、公正取引委員会の行う「審決」などは、この「前審としての裁判(審判)」にあたるものとされています。

戦前は、行政に関することがらは裁判所ではなく「行政裁判所」という特別裁判所で行われていました。一審制の裁判所で、不服があってもふつうの裁判所に訴えることはできませんでした。

その他、軍人などを裁く「軍法会議」、皇室についてのことがらを扱う「皇室裁判所」が存在していました。

しかし、今の日本ではすべての法律上の争いや刑罰を科することは最終的にすべて裁判所で決定することができるようになっています。

なお、弾劾裁判所は憲法が定めた「特別裁判所の例外」、または人によっては「特別裁判所ではない例外の裁判所」、などといいますが、いずれにしても禁止されている特別裁判所ではないとされています。

★さらに詳しく防衛問題について知りたい人は「裁判・司法制度改革」を見てみましょう!

「司法権と『裁判官の独立』」についての参考書籍・資料はこちらをごらんください。

▼こちらもご参照下さい。
大人のための教科書 政治の超基礎講座

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