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28年ぶりの貿易赤字で日本経済力がアップ!?(2ページ目)

2008年度の貿易統計速報(通関ベース)は、第2次石油危機以来、28年ぶりの貿易赤字に転落し、「深刻」との声も。「貿易赤字」について、基本的な理解のための解説をします。

執筆者:石原 敬子

海外景気に左右される、日本の貿易収支

自動車
米国の景気悪化は、自動車、電機などの日本の製造業を直撃!
貿易額の集計である以上、輸出立国である日本の貿易収支は、海外の動向に左右されます。海外のお客様たちに、日本製品を買ってもらえなければ、日本の貿易黒字は増えません。海外で生産されるエネルギーや原材料が値上がりしてしまえば出費がかさみ、貿易赤字を招きます。

また、同じ個数を輸出したり輸入したりしても、為替相場の変動によって、日本円ベースの金額が変わってきます。したがって、為替相場も貿易収支には大きく影響します。

「輸出立国ニッポン」の行く末は

「28年ぶりの貿易赤字」で、日本経済の動向が世界経済や商品市況、為替相場に左右されることが浮き彫りになりました。「輸出立国ニッポンを見直し、内需産業に力を入れるべきだ」という声も出ています。それはちょっと安直すぎるでしょう。国内の需要といっても、少子高齢化をすぐにストップさせるのは難しく、内需が日本経済を引っ張れるかというと、疑問だからです。

とはいえ、今まで通り輸出企業におんぶにだっこという産業構造はやや崩れるでしょう。この「28年ぶりの貿易赤字」は、日本の産業構造を見直す良いきっかけになったのかもしれません。

海外の経済動向や商品市況、為替相場で貿易額が左右されるのではなく、日本の製品、生産物やサービスの魅力が増して、どんな経済環境でも売れるようにすべき、という考え方が出てきています。世界同時不況によって、輸出で成り立っている日本の弱点が露呈、反省材料となっているのです。

そのために、新しい産業を育てたり、衰退しているが手を加えれば日本に優位性が戻るような産業を復活させる必要があります。この点で、農業分野や、環境分野などの最先端技術、バイオ医療などに期待が寄せられるでしょう。貿易減少の影響を直接的に受ける企業は、ビジネスモデルの再構築が迫られるでしょう。

内需拡大で消費者力がアップ

消費者としては、日本の製品や生産物にもっと目を向け、見直したいものです。自らが日本経済の一端を担っているという責任感、とでも言うのでしょうか。消費者が購入という形で日本の製品や生産物を支持することで、その産業は栄えます。

それには、価格だけで商品を選ぶのではなく、品質やサービス内容に目を向けるなど、1人ひとりの消費者の力が必要でしょう。海外の国々で日本の製品が売れることを期待する前に、国内で盛り上げていくことが大切なのではないでしょうか。

もちろん、企業や生産者にも頑張ってもらう必要があります。品質の向上、徹底したコスト管理、正確な表示など、国内外の消費者に評価される製品や生産物、サービスを提供し続けることが大前提です。

輸出大国という肩書きに傷がついた「28年ぶりの貿易赤字」ですが、考えてみると、日本の産業構造の偏りに気づかせてくれた、チャンスともいえます。将来、歴史を振り返ってみると「あの時があったからこそ、新しい産業が発達した今の日本があるんだよね」と言える日が来ることを願います。企業努力のみならず、消費者が日本の産業を意識し、見直すきっかけとし、ぜひとも日本経済の復活の原動力になってもらいたいものです。


【関連サイト】

『経常収支・経常黒字とは何か』

『バイアメリカン条項とは?保護貿易主義とは?』


【関連リンク】
『海外経済・日本の貿易事情、国際競争力』
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