2ページ目 【女系天皇を認めないために女性天皇を認めないのは憲法違反?】
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【女系天皇を認めないために女性天皇を認めないのは憲法違反?】
女性・女系天皇が今でもダメなのは憲法違反では?
たしかに、憲法第14条で定める「法の下の平等」に照らして、女性天皇や女系天皇を認めないことはおかしいという意見もあります。ただ、学説では、基本的に許されるというのが有力です。
現在の憲法は天皇制を「世襲」という、およそ平等原則とはかけ離れたもので維持するように規定しています(第2条)。そういう意味で、天皇制は「法の下の平等」の枠外にあると考えないと、憲法内部で自己矛盾が起こってしまうことになります。
よって、平等原則と、誰が皇位を継承するかを決める原則は、違う風に考えてもおかしくない、とされています。
では、女性・女系天皇の存在は憲法上許されないのですか?
そういうことはありません。戦前の大日本帝国憲法では、天皇は男子のみが世襲できると規定されていましたが(第2条)、現在の憲法では、「国会の議決する皇室典範」によって世襲の規定を定めるとしていますから(第2条)、皇室典範を国会で改正すれば許されます。
そのため、伝統にとらわれず、女性・女系天皇を認めようという動きも盛んになっています。政府による「皇室典範に関する有識者会議」の報告書でも、女系天皇の可能性について言及しています。
学説、といっても納得できません。最高裁の違憲審査は?
おそらく、最高裁が現在の「男系男子のみ世襲」について違憲審査をする可能性はゼロに近いでしょう。1つは、日本では「具体的事件(権利侵害など)の審理の中でしか憲法審査をしない」という「付随的審査制」がとられているからです。
そのため、訴えを起こす権利があるのは、皇族に限定されます。皇族の方が国に対して訴訟を起こすことは、かなり考えにくいことです。
もう1つは、最高裁は「高度な政治的ことがらは国民の代表である国会が決定することで最高裁の憲法審査権はない」という「統治行為論」をとっていることです。
そのため、仮に裁判があったとしても、最高裁がかなり高度な政治問題である皇位継承問題を審査する可能性はきわめて低いと思われます。
男性皇族が少なくなっていることも理由と聞きますが……
男系天皇による世襲は、一夫多妻制、つまり「側室制度」によって維持されてきた、ともいえます。しかし、日本の近代化の進展によって側室制度は否定されていきます。実際には大正天皇から、そして昭和天皇は自らの意思で側室制度を否定し、現在に至っています。
一夫一妻制では、当然女子しか生まれない可能性が高くなります。現に、今の皇太子殿下の後、皇位継承が可能な(男系男子の)皇族、または男系の皇位継承者を産めそうな皇族はいないのが現状です。
さきほどの「有識者会議」報告書でも、「世襲を安定させるためには女系もやむをえない」という考えを示しています(結論ではありません)。
60年前まではたくさんの男性皇族がいたと聞きましたが?
明治時代までは、たくさんの宮家があり、そこには多くの皇族がいました。しかし、終戦後日本を占領したGHQ(連合国軍総司令部)は、昭和天皇の弟以外の宮家をすべてなくし、多くの皇族たちを皇族から離脱させました。
そのため、彼らの子孫である「旧皇族」を「皇族復帰」させて、男系天皇の継承を主張する人々も多くいます。
10人くらいの「旧男系男子皇族」が現におられます。詳しくはガイド記事 「旧皇族の成り立ちと現在」をご覧ください。
旧皇族の皇族復帰は難しいのですか?
これについては、意見が分かれており、なんともいえません。これからの議論を見すえていきたいところです。先例は1つだけあります。平安時代の宇多天皇は、当初皇族から離れ「源」の姓を受けていましたが、その後、父が天皇に即位(光孝天皇)、やがて皇族に復帰して天皇に即位しています。
ただ、宇多天皇は皇族から離脱してから復帰するまで時間が長くありませんでした。しかし、旧皇族とよばれる人たちは実際にはその子孫であり、宇多天皇の例と一緒にするのはどうか、という声もあります。
しかし、男系男子天皇家の血脈を絶やさないことにはつながるわけで、旧皇族の皇族復帰については、今後大きな国民的議論になることも予想されます。