2ページ目 【一般国民は直接大統領候補を選んでいるわけではない?!】
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【現代になってもなぜに続く大統領選挙人制度】
本当の「大統領選」は年末~年始
本当の大統領選挙は、12月の中旬に行われます。「選ばれた」選挙人たちが州の首都に集まり、投票します。「選ばれた」といっても、事実上はそうではなく、州によって異なるようですが、勝った政党の州本部が適当に決めているようです。党の功労者とか、そういう人々が大統領選挙人になったりします。
投票は封印され、上院議長(=副大統領)に送られ、翌年1月6日に上下両院の全議員の前で開票され、ここで正式に大統領が選出されます。そして1月20日をもって、新しい大統領の任期が4年間、スタートすることになります。
「勝者総取り制」の問題点
州で1位の得票を獲得した勝者が大統領選挙人を総取りする仕組みは、勝者と敗者が明確にわかるという利点はあるものの、問題がないわけではありません。一番の問題は、「全国の得票数で1位になっても大統領選挙人の獲得数で1位になれない」可能性があるという問題です。
実際、過去3回、このような事態が起こっています。1回目は1876年で、一般投票で51%の得票をした民主党のティルデンが、獲得選挙人数で共和党のヘイズに184対185という超僅差で敗れています。
2回目は1888年で、やはり民主党のクリーブランドが、一般投票で共和党のハリソンに48.6%対47.8%と差をつけたものの、獲得選挙人数は168対233と逆に大差をつけられ、敗退しています。
そして3回目が記憶に新しい、前回2000年の大統領選です。一般投票では民主党のゴア・共和党のブッシュともに48%と互角で、全国規模ではゴア候補が得票率を上回っていたのですが、フロリダ州で数百票差の接戦で敗北、獲得選挙人数が267対271という僅差で、ゴア候補が敗れたのでした。
それでも続く?「勝者総取り制」
このようなことから、「勝者総取り制」を改めよう、という動きも出始めています。コロラド州は、一般投票の得票率に応じて獲得選挙人数を各候補に比例配分する制度変更を決定する住民投票を、大統領選と同時に実施することにしました。つまり各候補が50%づつとれば、獲得選挙人は1:1になるわけですね。
住民投票で可決されれば直ちに今回の選挙に適用されることになるということです。まだ多くの州では、まだこのような動きは本格化していませんが、再び一般投票の得票率と獲得選挙人数が逆転する事態になれば、この動きは他州に波及するかもしれません。
連邦制であるアメリカと複雑な大統領選の仕組みとの関連
そしてなにより、このように州別で大統領投票人を決めて・・・なんてややこしい方式ではなく、全国単位の獲得票数を使って一発できめればいいじゃないか、という声もあるにはあるのですが、あまり大きくなっていません。これには、アメリカが「連邦国家」である、ということと大きな関係があるのです。
日本人の多くは州=都道府県、くらいにしか思っていない人が多いですが、実際には州=国家なのです。アメリカは英語で「ユナイテッド・ステイツ」といいますよね。ステイツは国家のことです。アメリカは50ある「国家」の連合体なのです。
国家ですから、その地位は平等です。人口によって大統領選挙人の数こそ違いがありますけれども。したがって、州ごとに大統領候補を選び、州を代表して選挙人が大統領を選ぶシステムは、州の独立性を保つ非常に重要な意義を持っているわけです。
ですから、州を無視して、全国ひとつの単位で大統領を決めてしまうと、州は激しく反発するでしょう。特に小さな州は、自分たちの存在意義がますます薄くなってしまいますから、反対は必至です。
世界最古の近代民主制であるアメリカの政治制度。この先、どのように変ぼうしていくのか、またはしないのか、注目していきたいところです。
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