イスラム武装勢力とロシア治安部隊との激しい銃撃戦によって多くの死者がでてしまった北オセチア共和国・ベスランでの学校占拠事件。「新・世界の火薬庫」ともよばれるチェチェン・北オセチアなど「カフカス地方」について調べてみました。
1ページ目 【カフカス地方って、どんな問題を抱えた地域なんだろう?】
2ページ目 【チェチェン人と北オセチアの人々の微妙な歴史関係】
3ページ目 【ロシア、プーチン政権の姿勢がテロを引き起こす?】
【カフカス地方って、どんな問題を抱えた地域なんだろう?】
「新・世界の火薬庫 カフカス地方」
「世界の火薬庫」といえば、かつてはいろいろな民族がモザイク上に入り乱れ、紛争のたえなかったバルカン半島のことをさしていました。第1次世界大戦の勃発も、バルカン半島からおこったことは有名ですね。そのバルカン情勢がおさまりをみせつつある今、あらたな民族上の紛争多発地帯として注目を浴びるようになったのが、黒海とカスピ海に囲まれた山岳地帯、カフカス(コーカサス)地方です。
あの悲惨な学校占拠事件で世界の注目を浴びた北オセチア、それからこの事件との関係を指摘されているチェチェンも、この地域に属します。
この地域も、民族・宗教が入り乱れ、国境線を超えていろんな民族が存在しています。
チェチェン人などは、ロシアの南、旧ソ連のグルジアの民族と同じ、むかしからここに住んでいたカフカス族になります。しかし、グルジア人はキリスト教徒(正教)、チェチェン人はイスラム教徒と、宗教は異なります。
トルコ系の民族も、南北にわかれて住んでいます。かれらはだいたいイスラム教徒です。
アゼルバイジャンはこのトルコ系のアゼルバイジャン人が8割強を占めますが、なかに隣国アルメニア人が多数を占めるナゴルノ・カラバフ州というのがあります。この州の帰属をめぐって、1990年代初頭、両国は武力衝突を起こします。
アルメニア人はキリスト教徒ですが、かなり古くに(3世紀)キリスト教を受け入れたため、「アルメニア教」ともいわれる独特の宗教になっています。イスラエルで問題になっている東エルサレムでも、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教地区とならんで、アルメニア教地区があります。
グルジアも国家分裂の危機が
グルジアも、国家が分裂する危機がありました。黒海沿岸のアブハジア・アジャール両自治共和国は、グルジア人と同じカフカス系なのですが、イスラム教徒が強く、グルジアからの独立を望むようになりました。アブハジア紛争は1994年にいちおう終結したのですが、アジャールでは今年(2004年)グルジア政府と一足触発の危機に直面しています。結局アブハジアの強硬派政権が崩壊し、事態は収束しました。
また、南オセチア州、つまりあの北オセチアとおなじオセット人が住む領域があって、ここのオセット人たちはロシアへの編入を要求して紛争になります。これもいちおう今はおさまっています。
北オセチアのオセット人とは
北オセチアを構成しているのがオセット人です。オセット人の起源は伝説が多くよくわからないことが多いのですが、古代に南ロシアで勢力を誇ったイラン系のサルマート人の末裔ではないかと言われています。オセット人はキリスト教徒で、イスラム教徒の多いロシア領カフカス地方ではわりと異質な存在です。そこでチェチェン武装勢力に狙われたというのですが、本当のところはどうなのでしょうか。次のページで考えてみましょう。