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【ヨーロッパなのに言語はアラブ系、マルタ】
十字軍騎士団の血がいまでも騒ぐ?
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マルタは地中海にうかぶ、ヨーロッパと北アフリカをつなぐ飛び石のような国です。やはり海運の要衝ということで、紀元前からいろいろな民族や国が領有を争ってきました。
9世紀おわりにアラブの支配を受けたため、今でも公用語であるマルタ語(英語と併用)はアラブ系のセム=ハム語系というヨーロッパではめずらしい言語となっています。アラブの支配は11世紀末に終わり、その後も転々としながら、1522年、スペイン王によってヨハネ騎士団の領土として与えられます。
ヨハネ騎士団は中世さかんだった十字軍(キリスト教勢力による聖地エルサレム奪還を大義としたイスラム教勢力への侵攻)で活躍した連中で、しかし十字軍運動がおとろえるとその活動も衰え、拠点であったギリシアのロードス島も追い出されてしまいます。そこでマルタを与えられたわけですね。
その後もイスラム教勢力のヨーロッパ侵攻に対する砦(とりで)としてマルタとマルタ騎士団は活躍しますが、18世紀末にナポレオンにあっさり征服されてしまいます。これ以降、マルタ騎士団は島から撤退し、医療活動や慈善事業をおこなう団体として、今でもローマを拠点に活動しています。
で、マルタはその後イギリスに奪われ、以後1964年までイギリス領となります。しかしイギリスはマルタの持つ軍事的な意味から基地をなかなか手放さず、1979年までNATO基地として海軍基地が置かれていました。
面積はあわせて316平方kmと淡路島の約半分。そのわりには人口は38万人ほどいます。そのため移民が多く、特に1950~60年代には数万人規模で移民が島からでていったほどです。
政治形態は共和制で、議会から選出された大統領がいますが儀礼的なもので、実質は日本と同じ議院内閣制です。議会は一院制で現在政権をとっている国民党と野党労働党の二大政党制の様相をみせています。
憲法上は非同盟路線をうたっているものの、実際には西ヨーロッパ諸国とのつながりが深く、加盟はしていませんがNATOとも緊密な関係を築いてきました。親西ヨーロッパなのが国民党で、非同盟路線が労働党、といった感じで、ときどきの政権で若干外交政策にブレが生じるようです。
軍隊は志願制で1900人とこの規模の小国としては多いほう。やはり騎士団の国、ということでしょうか、それとも島国だけに国防には気を使う、というところでしょうか。日本には大使館はなく、イタリア大使館が業務を代行します(在日マルタ大使は中国にいます)。でも1996年にマルタで手塚治虫展が開催されるなど、日本との関係は浅くありません。
2003年の国民投票でEU加盟が可決され、いよいよ今年5月からEUに加盟することになりました。コンビニなんか一軒もない観光業主体の素朴な国のようですが、はたして経済的にどうなっていくのか、注目です。