★ポイント★
<1>日本は今まで貯蓄を行う若年層が多かったので貯蓄率が高かったが、今後、高齢化社会が進めば若年層が減少し貯蓄率は低下すると予想される。
<2>若年労働者の減少を防ぐには、外国人労働者の受け入れを行うのが効果的。
消費の理論を使うことによって、高齢化の進行に伴い日本の貯蓄率は低下することもわかります。それは、次のような理屈からです。高齢化に伴い高齢者が増えます。高齢者は退職者が多く、所得は少ないですから、「貯蓄=所得―消費」はマイナスとなります。ですから、国民の中で貯蓄がマイナスの人が増えれば、国全体での貯蓄率は急速に低下していくわけです。
この貯蓄率の低下は日本経済を次のように大きく変えます。貯蓄率の高い現在の日本では、その多くの貯蓄は金融機関に預けられ、金融機関から国内の設備投資や海外への投資や貸付けへと回っています。しかし、高齢化社会になると、貯蓄率が低下し貯蓄が少なくなる結果、国内の設備投資や海外への投資や貸付けにまわす資金がなくなり、資金不足に陥るおそれが出てきます。そうすると、現在とは逆に、外国から資金を借り入れることになるかもしれません。
以上のような事態が日本経済にどのような影響を与えるかは良くわからない部分もありますが、悪い影響を与えることは間違いなさそうです。対策としては、貯蓄率低下を防ぐため、若い労働者が増加すればよいのですが、今から出産、子育てを奨励しても、その子らが若い労働者となるには20年くらいかかります。
それまで待てないということであれば、外国人の若年労働者を大量に受け入れるしか手はなさそうです。つまり、日本に在住する外国人若年労働者の貯蓄は日本国内での貯蓄ですから、日本の貯蓄率低下を抑える方法です。第2次世界大戦後、男性労働者を戦争で多数失ったドイツは若い労働者を確保するために外国人労働者を大量に受け入れました。日本も、少子高齢化による若い労働者不足対策として、ドイツと同じ道を歩むのでしょうか。