(2002.3.30)
1ページ目 【「盟友」失脚でも小泉首相の基盤は強化】
2ページ目 【「ポスト小泉」にむけて「海図なき航海」】
3ページ目 【自民党のニューリーダーたち】
【「盟友」失脚でも小泉首相の基盤は強化】
最大のライバル失脚でほっと一息、が本音?
首相の「盟友」加藤紘一衆院議員が秘書の疑惑で自民党を離党しました。これによって小泉首相、加藤氏、山崎幹事長の同期議員3人が自民党改革を目指して活動してきた「YKK」とその時代が、幕を降ろすことになりそうです。
ただでさえ外相更迭によって支持率が急低下中の小泉首相。盟友の事件でますますピンチ・・・と思われがちですが、実際にはどうもそうではないようです。
もともとYKKは「打倒・経世会」で立ち上がったトリオ。「経世会」とは昔の竹下派、今の橋本派のことです。
竹下派ら大派閥による「数の力」による自民党支配、そして派閥中心政治のためにおこるさまざまな弊害(派閥中心の人事など)。そんな派閥支配を打ちやぶるために派閥を超えて結成されたのがYKKでした。
その経世会を昨年の自民党総裁選でとうとう「打倒」してしまった「K」小泉首相。そして今までの慣習を捨て、派閥を無視した人事を実行。田中真紀子氏の外相起用などはまさに派閥政治の慣習からは考えられないものでした。
YKKの役割は、この時点で終わっていたのかもしれません。派閥主義を打ち破った昨年の総裁選での勝利で、YKKはその目的を達成してしまったのでした。ここからあとのことは、YKK3人の統一したシナリオはなかったのでしょう。
実際、小泉首相の就任後、とくに首相と加藤氏の距離が離れていきました。YKKの目標達成をきっかけに、もともと「タカ派」的な言動の多かった小泉首相と、「ハト派」の加藤氏の間の意見の食い違いが、表面化しつつありました。
昨年の秋ごろからは加藤氏に「抵抗勢力」のボス的存在である野中氏・古賀氏が接近。加藤氏が「ポスト小泉」の一番手として再び注目を浴びはじめていました。
そんななかでの突然の事件発覚、そして加藤氏の離党。「ポスト小泉」一番手の失脚ですから、首相の政権基盤には大きなプラス。今後の政権維持がやりやすくなったといえるでしょう。
首相もそれを分かっているのか、加藤氏に関しては「公の場(証人喚問)で説明させよう」とかけっこう冷たい態度。もともとYKKのことを「友情と打算の二重構造」といってのけていた首相らしいといえば首相らしいですが。
ともあれアンチ自民党派閥政治の代表格YKKとその時代はここでジ・エンド。橋本派をはじめとした派閥の勢いも急速に弱まりつつあります。
こんな状況のなか、自民党政治は今後どうなっていくのでしょうか。次のページで解説していきましょう。