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経済入門 早わかりケインズ-3 昔の経済学の主流-古典派の理論

ケインズ以前の経済学の主流派の考えである古典派をやさしく解説。古典派の問題点は、不況の説明ができないことです。

執筆者:石川 秀樹


経済学★超★入門「早わかりケインズ」シリーズ

第1弾 国内総生産(GDP)ってなに?
第2弾 景気と国内総生産(GDP)の関係は?
第3弾 昔の経済学の主流-古典派の理論<今回>
第4弾 世界大恐慌を説明した「ケインズ」

★ ポイント★
1. 世界大恐慌の時期にケインズが登場するまでの主流の経済学を古典派とよぶ。
2. 古典派の考えでは、「すべての市場において、価格が動くことにより、需要量と供給量は等しくなり、経済はハッピーになる」ので、不況を説明できない。


古典派とは、世界大恐慌の時期にケインズが登場するまでの主流の経済学と思ってください。「古典」とは、文字通り古いのですが、ケインズより古い経済学ということです。

古典派は、価格の変動により、経済の不均衡は必ず解消されると考えました。たとえば、買いたいという需要量より、売りたいという供給量が多ければ、売れ残りが生じてしまいます。このとき、売れ残りがあれば価格は下落します。価格が下落することで、少なかった需要量は増加するでしょうし、企業は儲からなくなりますから供給量は減少するでしょう。その結果、需要量と供給量は等しくなっていきます。

逆に、売りたいという供給量より買いたいという需要量が多ければ、品切れで物不足が生じてしまいます。このとき、物が不足しているので価格は上昇します。価格が上昇することで、多かった需要量は減少するでしょうし、企業は儲かるようになりますから供給量は増加するでしょう。その結果、需要量と供給量は等しくなっていきます。

以上のようにして、需要量と供給量は同じでなくても、価格の変動により、需要量と供給量は同じになります。ということは、供給量=売りたい量、と、需要量=買いたい量は同じになるので、企業は売りたい量がすべて売れ、需要者は買いたい量はすべて買うことができるのでハッピーな状態といえます。

古典派は、「すべての市場において、価格が動くことにより、需要量と供給量は等しくなり、経済はハッピーになる」と考えます。物の市場でも需要量と供給量は等しく、売れ残りはないので、企業は売れ残りに苦しむことはありません。

また、労働市場においても価格が動くことにより、需要量と供給量は等しくなります。労働市場における価格は、賃金です。需要量とは企業の求人数、供給量とは就職希望者数です。ですから、古典派は、賃金が動くことにより、企業の求人数と就職希望者数は同じとなり、働きたいのに働けないという失業は発生せず、ハッピーということになります。

なぜ、失業が発生しないかというと,失業とは労働市場における売れ残りと考えることが出来ます。古典派は、売れ残りである失業が続く限り、価格である賃金が下がりつづけると考えます。そして、賃金が下がる結果、企業の労働需要が増加し、失業はなくなるということです。

以上より、古典派の考えでは、経済全体を考えたときに、常に失業がなく、売れ残りもなくハッピーな状態、すなわち、好況である、ということになります

ところが、1929年、ニューヨークの株価大暴落を契機に世界大恐慌というかつてない大不況が起こり、大量失業、大量売れ残り、という事態が発生しました。もちろん、古典派と呼ばれるそれまでの経済学では、これらの事態を説明できませんでした。

このような、世界大恐慌のときに、不況の説明をおこなったのがケインズです。

次回は、いよいよ
第4弾 世界大恐慌を説明した「ケインズ」
です。

★キーワード★
古典派
世界大恐慌の時期にケインズが登場するまでの主流の経済学。「すべての市場において、価格が動くことにより、需要量と供給量は等しくなり、経済はハッピーになる」と考える。

世界大恐慌
1929年、ニューヨークの株価大暴落を契機に起こった世界的大不況。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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