古民家/古民家探訪

築70年超!パリのアパルトマンに学ぶ

欧米では古くても住宅の価値が下がることはないといいます。フランス・パリも同様の傾向があるようです。今回はパリの築70年のアパートを紹介します。不動産売買にまつわる驚きのトラブルもあったそうです。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド

欧米では古いという理由で、住宅の価値が下がることはなく、築50年、100年といった物件が売買されるなど、不動産として価値が認められています。フランスも例外ではないようで、今回は、パリ在住の日本人Tさんから、ご自身が購入された築70年のアパートの話を伺いました。

貯金ゼロでパリにアパートを買う

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寝室の床のフローリングは自分で張ったそうです
11年前に渡仏したTさんがアパートを買ったのは2003年の夏のこと。そのころ住んでいたパリ4区にあるマレ地区のアパートの狭さと家賃の高さがイヤになり、購入を決意しました。当時は、住宅ローンの金利が非常に低く、政府としても不動産の購入を奨励していた時期だったこともあり、貯金ゼロでもなんとか不動産を買うことができたそうです。

人気上昇中? パリの11区

Tさんのアパートがあるのはパリの11区。有名店が数多く集まり、ファッションなどの中心地として有名なマレの北にあります。11区は広いので地域によっても雰囲気が違うようですが、アラブ人、アフリカ人、中国人などいろいろな国の人たちが集まっているのだとか。マレの人気高騰によって、クリエイターやデザイナー、ショップがマレよりも家賃の安い11区に移動し、だんだんとおしゃれなエリアに変わってきているそうです。

そんな11区に、Tさんは南向きのアパートをみつけました。はっきりした築年月は不明なものの、建物の建築は1930年ごろだとか。築70年超ですが、パリでは決して古いほうではないようです。部屋の広さは約22m2。以前の住まいに比べれば広く、何より日当たりがいいのが気に入って購入しました。
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6階建て(仏式では5階建て)の4階(仏式では3階)にあるTんのアパート


写真でわかるように、確かに古い建物ではありますが、手擦れた感じが味わいとなり、天井が高く、窓の大きな部屋は明るく開放感があります。窓の手すりの植物のような曲線の飾りがアール・ヌーボー風で、年代を感じさせます。

念願のアパートを手に入れたТさんは、部屋の床をペンキで黒く塗ったり、キッチンのキャビネットもDIYで造作し、ニスを塗ったり、シンクを取り付けたりしました。さらに電気工事も自分で行い、換気扇も設置したといいますから、住まいに対するTさんのこだわりが伺えます。いろいろ手を入れて自分の好みの空間に変えていきましたが、自ら工事をしたのはやむを得ない事情がありました。また、実際に買うまでの道のりも、平坦なものではなかったようです。

次のページでは、Tさんの前に立ちはだかったいくつもの問題について話しましょう。

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