捕鯨問題がなかなか落ち着かない。話の矛先はシー・シェパードに向いているが、環境破壊が叫ばれる昨今、絶滅危惧種は増える一方のご時世で、捕鯨問題のようなケースはほかにもあるのではないか?オールアバウト「グルメ・各国料理(海外)」ガイドの古屋江美子氏に、世界の食事情と照らし合わせ、絶滅種と捕食の問題について聞いた。

「グルメ・各国料理(海外)」ガイド古屋江美子

「グルメ・各国料理(海外)」ガイド
古屋江美子

捕獲・捕食を非難されるレベルの絶滅種とはどのくらいのレベルから非難の対象となり、そして誰が決めるのだろうか?

「絶滅の危機にある生物をまとめた一覧、いわゆる『レッドリスト』は世界各地で作られています。日本にも環境省や都道府県が作ったレッドリストがありますが、世界的に最も知られているのは、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでしょう。IUCNのレッドリストでは、絶滅危惧種であるかどうかは個体数や生息面積の減少率、絶滅確率の定量的予測値などの基準によって判定され、『深刻な危機』『危機』『危急』の3種類に分類されます。

こうした絶滅のおそれのある生物の国際取引について取り決めたものが、ワシントン条約です。ちょうど3/13に始まるワシントン条約締約国会議で、大西洋クロマグロを「付属書1」(※絶滅のおそれのある種で取引による影響を受けている又は受けるおそれのあるもの)に指定しようとモナコが提案し、ニュースになっていますね。もし指定されると、商業目的の国際取引が出来なくなるため、日本への輸入もストップします。ちなみにワシントン条約の分類は必ずしもレッドリストと一致するわけではありません。大西洋クロマグロはIUCNのレッドリストでは「データ不足」となっています。また、ミンククジラなどはワシントン条約では付属書1に分類されていますが、日本は“留保”とし、条約の対象外としています」

現在、鯨やクロマグロのように、私たちの生活に関連した絶滅種の捕食に関する問題はほかにもあるのだろうか?

「2007年、ワシントン条約の付属書2(※現在は必ずしも絶滅のおそれはないが、取引を規制しなければ絶滅のおそれのあるもの)にヨーロッパウナギを掲載することが決まりました。それをうけて昨年3月からヨーロッパウナギの輸出入には輸出国政府の発行する輸出許可書等が必要になっています。世界の半分以上のウナギを消費する日本にとって影響は小さくありませんが、過去数十年でヨーロッパウナギの稚魚が95%以上も減っているという事実を考えると当然の措置といえるでしょう。ヨーロッパウナギは稚魚が中国へ輸出され、養殖して蒲焼にした後、日本に輸入されています。

ほかにもマダガスカルでは、昨年起きたクーデターによる政情不安を背景に、野生動物の保護区に密猟者が侵入。IUCNのレッドリストに掲載されているキツネザルが密猟され、高級食材としてレストランで供されています。当然このようなことは国際的にも非難されていますし、現地では密漁者摘発の動きもあります」

古くから各国に残る文化的背景と時代の変遷、環境の変化。一概に良し悪しが決められない状況が条約批准の対応に現れ、差異が出ているようだ。温暖化が叫ばれ続け、一方で氷河期説も聞こえ出した現代社会、気になるのは第二、第三の絶滅種。私たちの食生活に影響がありそうな、今後の「絶滅種と食」について聞いてみた。

「世界三大珍味のひとつであるキャビアはチョウザメの卵ですが、チョウザメの漁獲量が乱獲や密輸により激減し、問題になっています。おもな産地であるカスピ海のキャビアは過去数十年で約7割減ったという報告もあります。ワシントン条約ではすべてが付属書1もしくは付属書2に掲載され、過去には輸出が禁止された年もありました。最近では日本でもキャビアの養殖がおこなわれていますが、天然キャビアが食べられなくなる日はそう遠くないのかもしれません」

高級食材の代名詞、天然キャビアが食べられないとなると、大きな話題を呼びそうだ。10年後、20年後、私たちの食卓に並ぶメニューが今と同じかどうか、その保障はどこにもない。
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