昨年から不思議に感じてしまう現象があった。世界中で猛威を奮い続けている新型インフルエンザ。その感染が、免疫力の少ない年少者や高齢者にわたることは十分に考えられても、グラウンドやコートを走り回る屈強なスポーツアスリートたちの多くに意外にも感染している……という事実に首をひねらざるを得なかったのだ。昨年夏に発生した北海道日本ハムファイターズの集団感染も、記憶に新しい。
この疑問に明確に答えてくれたのが、感染症を専門とし、インフルエンザにも詳しいオールアバウト「新型インフルエンザ」ガイドの西園寺克氏だった。「一般的に運動選手は基礎体力が強い。だからといって防御体力(免疫力ともいう)が強いとは限らない」と、西園寺氏はアスリートを特別視しない方が賢明であることを強調する。しかし、新型インフルエンザとアスリートとの間に意外な因果関係があることを発見していたのである。
それは、「球技系がかかりやすい」という法則だ。「バスケットボール、バレーボール、ハンドボールなどの競技で遠征試合に行って、相手からうつされ、集団感染するケースが多発しました。これはボールを介して感染している可能性が極めて高いですね」と西園寺氏は説明する。
これをさらに分析して、3つの行動パターンが感染に大きく関わっていることまで解説してくれた。「1つめは、ボールに触ること。運動して汗もかきますし、咳などがボールにかかることもある。かなりの確率でボールは汚染されます。元凶の第一はこのボールですね。2つめは、移動のバスの中や着替えをするロッカールームやベンチです。十分にうつってしまう距離や空間を共有することが挙げられます。そして、3つめが、相手(チームメイト)の体に触ること。得点を入れたり勝ったりしたら行われるハイタッチ(ハイファイブ)などは、完全にアウトですね。あれはダメです」。
もうひとつ、球技ではないが武道にあった。「剣道はダメです。踏み込む時、声を出しますよね、面!とか小手!とか。あれも危険です」と言い切った。
サッカーに関しては、スポーツドリンクの回し飲みが原因ではといわれているが、「それよりもスポーツドリンクを持つ手からでしょうね」と感染元を指摘する。
西園寺氏の分析力、洞察力や恐るべし。感染を防ぐためには、とにかく手を洗うことが最優先事項。ボールに触る競技者は、意識して手を洗ってほしい。翌日には、自分もしくは誰かを寝込ませる可能性があるのだから。
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