●読みくらべ-育児は人それぞれ●
『ママぽよ』は10年前の幼稚園ママ、『毎日かあさん』は、2002年の保育園ママ。が、どちらも年齢の近い「兄・妹」の2人の育児生活が描かれている点は同じ。
『ママぽよ』で目につくのは、「できれば、怒らない優しいママでいたい」という思い。
子どもと毎日わいわい楽しくやってるけれど、たまに「あーもうー!」と爆発してしまう。「ああ、私って・・・」となる。
『毎日かあさん』では、その部分はすでにあきらめられているように見える。
「子どもは汚いものが好きで、ぐちゃぐちゃな生活なのは当たり前。私もそうやって育ってきたし」という達観が見られる。
もちろん、『毎日かあさん』でも「字を読めないのはウチの子だけかー!」という部分も見られるのだが、『ママぽよ』の「私って・・・」に比べると、かなり相対化されているように感じられる。
●ここ10年間の、「育児観」の変化●
この違いはどこにあるのか。
もちろん、「幼稚園を選ぶか保育園を選ぶか」という時点ですでに考え方の違いがあるのだろうし、そもそも連載されていたのが「育児雑誌(育児中のママ)か一般新聞(あらゆる人々)か」という、読者対象の違いもあるだろう。
しかし、それだけではなく、「ここ10年間という時代の違い」もあるのではないか、とガイドは考える。
『ママぽよ』の描かれた1990年代前半は、現在に比べればまだ「母親なんだから、○○でなくちゃ」という規範が強かったのではないだろうか。
その後10年たち、いろいろなマンガ家たちが「自分の育児」を表現した後の『毎日かあさん』では、「母親なんだからきちんと」という規範は、もはやパロディ化しているように見える。
その代わりに拠っているのは、著者の西原氏自身が育った、30数年前のふるさとでの子ども時代であろう。
「ちっともきちんとはしていなかったけど、でも私はふしあわせではなかった。だから、自分の子どももそうやって育てていこう。」
西原氏の姿勢は、ガイドにはこのように感じられる。
●今、両方が面白い●
一方、現在でも『ママぽよ』の「できれば優しいお母さんに」という気持ちから完全に解放されているというママは、まだ少ないのではないか。
いや、むしろ初心者ママの多くは、育児をそこから出発させているはず。10年たっても、『ママぽよ』が読み継がれる理由は、そこにある。
『ママぽよ』の迷いながら、バタバタ育児、『毎日かあさん』のぐちゃぐちゃだけど、達観育児。
どちらも、幼稚園ママ・保育園ママの双方に「効く」はず。それが2冊を読みくらべての、結論である。
育児に疲れた日常を、そっと癒してくれる育児マンガ。直接役に立つものではないかもしれないけど、明日少し元気になれるかも。
いろんな母親がいて、いろんな子どもがいて、いろんな育児がある。そのことに気づくことが、いちばん大事なのかもしれません。