くだらないのにやめられない
マラソン選手は競技中、だんだんと気分が高揚して苦痛を感じなくなり、やがて気分がよくなってくるという現象をランナーズハイと言います。脳下垂体から麻薬成分「エンケファリン」「エンドルフィン」が分泌されることによる高揚感。僕はこれに近い気分を味わいました。 |
本当にくだらない。
本当に、くだらない。
でもやめられない。気が付くとずーっとPSPを握っていることもしばしば。
一番最初にバイトしたのが前ページでも書いたボールペン工場なのですが、右から流れてくるボールペンの向きを見て、ペンが上ならそのまま、逆なら方向キーの上下どちらかを押して回転させて、○ボタンでキャップをはめます。
これだけの作業です。
これだけの作業なのに、僕は気が付くと延々と同じことをやっていました。
500本くらいで不意に我に返ってその中毒性の高さに恐れおののいたものです。
オレ、ひたすらボールペンにキャップはめてるよ。
僕は工場勤務の経験があるんですが、単純作業をずーっと繰り返して没頭していると一種のトランス状態に陥るんですね。
もっと手際よく!
無駄を少なく!
ワックス塗る!ワックス取る!(ミヤギさん)
という感じで、ひたすらスピードを追求していたりするんです。
例えばまき割りのバイト。おばあさんが乗せた薪をすばやく叩き割っていくんですが、途中おばあさんは何を思ったか動物を乗せます。
勢いよくそのまま叩き割ってしまうとちょっと嫌な音とともに動物が真っ二つに…。
世の中のいろんな団体から抗議を受けそうなブラックさもこのタイトルの持ち味といえます。
また名作なのはデモ行進。米粒ほどの主人公が、警官に捕まらないようにビルから出てくる人々を拾って公園に集めます。
人を集めれば集めるだけ行進は長くなり、つかまる確率は上がりますが、その分ボーナスも増えます。
この辺の絶妙さ。
ちなみにバイト料には全て但し書きがついているのですが、デモ行進は「デモ成功料として」と書かれていました。
もはやバイトかどうかも良くわかりません。
その辺の細部のつくり込みまでが清々しいほどに脱力テイストなのです。
合コンで人気者は間違いなし
恐い。凄く恐い。 |
例えば電卓酒場。これは割り勘用電卓なのですが、合計金額、人数から割り勘費用を算出するというもの。さらに途中で「終電なくなっちゃうからー☆」などといって女子が帰りがけにいくらか置いていったとき、それを組み入れて算出できるというスグレモノ。
他にもすごくリアルな目を表示させてゴーグルのように装着して変装アイテムとして使うこともできます。これ、ウケます。怖くて試してないけど。
この脱力テイストが愛せる全ての人に捧ぐ
いや本当、延々やってるのも楽しいけどホステスの電話番号を聞きだすという「プライベートナンバー」とかは結構頭使いますよ。必死に電話番号聞いてる自分に軽く自己嫌悪に陥りますが。 |
愛せます。
これぞまさに、まったく脳を鍛えない大人のPSPゲーム。
逆に脳が柔らかくなるかもしれません。
ある意味溶けます。
しかし、この脱力テイストをしっかりとサポートしているのが操作性の良さであることは間違いないでしょう。
冒頭で紹介したボールペン工場やひよこ鑑定など、次々に同じ作業をするルーチン系のゲームでは操作性が命です。
このタイトルではそこが非常に優れていて、操作していてストレスを感じさせません。だから本気で没頭するとありえないようなスピードでのプレイが可能だったりするんです。
PSPを持っている人にオススメな短時間でできるゲームから、みっちり10分間のプレイを強要するものまで。
万人にオススメできるテイストではないかもしれませんが、僕としては是非一度手にとって「くだらねー!」とその世界にどっぷりハマって欲しいものです。確実に他の人とその下らなさを共有したくなる、そんな魅力のあるタイトルなのです。
バイトヘル2000