散歩/和む散歩ルート

中野駅北口から哲学堂へ 瞑想する散歩(2ページ目)

中野駅からブロードウェイを抜けて、刑務所作業製品を購入。そして、平和の森公園を抜け、哲学堂をめざす。歩くといろんなことに遭遇する。歩くことは哲学であり、瞑想なのだ。

増田 剛己

執筆者:増田 剛己

散歩ガイド

刑務所作業製品を見て買う

刑務所作業製品。きちんとつくられていて、丈夫にできている。しかも安い!
中野ブロードウェイを抜けるとそこは早稲田通り。道を渡り左側へ歩く。セブンイレブンがあるので、そこを右に曲がる。

そこは、平和公園通りという通りである。住宅街を抜けると、左側に矯正会館という建物が見えてくる。「販売ルーム」という文字がある。立ち寄る予定はなかったのだけれど、なにやらお店のようになっている。

なんだろう。わからないまま中に入ってみると、これが刑務所にいる受刑者が作った製品を売るお店だった。

おお、ニュースなどで見たことはあるが、これが受刑者の作った製品かぁ。木工製品が多いが、衣服や石鹸などの雑貨などもある。値段はデパートなどで買うよりは安めである。

が、なんともおもしろいのは各コーナーに刑務所の所在地が書かれているところ。さっそくNくんが自分の実家がある三重県の刑務所の製品を見つけた。

店内は広く、全国各刑務所でつくられた製品が販売されている
「これはどこにあるんですか」

と中年女性の店員さんに聞いている。その説明に、

「あーあー、あそこですか」

といつもながらの聞いていないような受け答え。僕にはよくわからないが、そこでは枕や枕カバーが作られている。さっそくNくんはひとつ購入。

どこの刑務所によって得意分野があるのかと尋ねてみた。店員さんによれば、

「やはり、手の込んだ技術が必要なものは長い刑期の方が多い刑務所ですし、短いのはこうした枕カバーのような簡単なものを作っているみたいですね」

あ、なるほどねぇ。刑務所によってそれぞれ特徴があるんだ、と感心していると

「他の刑務所はないんですけど、ここのは製品に名前が入っているんですよ」

と木彫りの工芸品を見せてくれた。そこには「網走刑務所」とある。あー、なるほど。ここのはわざわざ名前を入れたほうが人気があるんだ。

「以前は、表札があったんですけどね。『網走刑務所』って入った。それなんかすぐに売れちゃいました」

と言う。ああ、なるほどねぇ。網走刑務所という名前が入っているのは木彫りのものが多かった。同じ様に木彫りのものには少年刑務所のものもあったが、これもなかなかいい品物である。

もう少し見て行きたかったが、先を急がなくてはならない。ここは、また来たいなぁ。やっているのは10時から15時。お休みは月曜日、日曜日、祝祭日。

ここは、昔、中野刑務所があった場所なのだそうだ。さきほどの店員の女性は

旧中野刑務所。今はもう刑務所はないが、門だけが当時の面影を残す
「私はここのことは知らないんですけど、主人などはこのあたりなんで、子供の頃、サイレンが鳴るんですって。受刑者が逃げると」

へえ。そんな場所だったんだ、ここは。昭和58年までここに存在していたのだそうだ。「ほら、隣に塀があるでしょ」と窓の外を指差す。ああ、なるほど。僕らはその場所を辞して、塀を見に行った。さほど高くはない塀だ。

塀の先にちょっとしたレンガ造りの建物がある。建物の前に樹があって、雰囲気があるなぁ。近寄ってみると、説明書きがある。

なになに…。「旧豊多摩監獄表門」とある。ほっほー、昔はここが門だったんだねぇ。明治43年から5年ほどかけて建てられたとのこと。その名称は
「豊多摩監獄」→「豊多摩刑務所」→「中野刑務所」と変わったが、この門はずっとこの場所にあったらしい。

それにしても昔は監獄といったんだねぇ。今はとても静な風が吹いているだけ。

あとから調べてわかったのだけれど、戦争中には多くの文化人が治安維持法のもとで逮捕され、ここに収監されていた。哲学者、三木清もここに収監され、獄死したそうだ。
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