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これが日本画の超新星だ!2008(5ページ目)

今年も今後期待される日本画家を挙げながら日本画界の一年を振り返りたいと思います。今回は特に公募展別ではなく独自の動きをしている人に焦点をあてたいと思います。

執筆者:松原 洋一

日本画の境界線を超えボーダレス、グローバル化へ

ガイド:コンクールでもそうですが、「日本画」という言葉を使う場合、その定義が問題になりますね。これは古くて新しい問題で、「日本画」という言葉には宿命的に付いてまわります。この[日本画]サイトでは大まかにいって、日本伝統の技法で描いた明治以降の絵画を日本画、日本画の公募展に出したり、日本画家に師事したり、大学で日本画科に籍を置いたりした人を日本画家としています。だけど必ずこの範囲に入らない人が出てくるんですよね。というよりそんな規格外の人を待っていたりして…。
岡村桂三郎
立島:1980年代後半日本画のイメージを大きく変えようとする様々な表現とその試みが東京芸術大学で日本画を専攻した作家を中心に起こったことは皆さんご存じですよね。岡村桂三郎、斉藤典彦、河嶋淳司らはその先駆け的存在で、その後それに追随するように台頭してきたのがマコトフジムラや間島秀徳、また多摩美術大学出身の尾長良範、武田州左も創画所属ではあるけどそういう範疇に入る作家だと思います。彼らは曖昧な既成概念に縛られずに日本画というものを自由に解釈し制作、発表を行なったという背景があったから今の三瀬夏之介とか町田久美のようなああいうポジションで活躍できる作家が、つまり規格外と言えるような作家に繋がるのだと思う。また、美術館でも佐藤美術館はもちろん常にそうだが、他では例えば東京都現代美術館の”no border”とか横浜美術館の「日本×画展」のような企画が出来るようになったことも面白い作家が出てこられる要因のひとつではないかな。論点ズレてませんかね。
町田久美
ガイド:いやいや、そんな話をしたかったんですよ。だけど、岡村さんたちの次の世代はけっこう苦戦しましたよね。美術業界は次の世代でもうひと波くると思ってすごく期待したんだけど、1964、5年生まれの作家たちは「新しい日本画」という言葉に振り回された感もあります。廣田さんはどうお考えですか。
廣田:難しい問題ですね。日本画のような洋画があったり、洋画のような日本画があったり。でも今の状況は、「新しい日本画」を目指している人がいるようには思わないのですが…。作家も素材が自分に合っているとか好きだからという理由の人がほとんどではないでしょうか。特に若い作家では…。見る側から考えると日本人は何となくの分類で納得できてしまい分類したがりますが、海外の人には正直まったく関係のないことで素材についてだけは詳しく聞かれました。台湾では説明すると「ああジャオツァイ(膠彩)」と言って納得していました。だから日本画は海外に出るとワークスオンペーパー(少し意味合いが違うように思いますが…)だったり膠彩だったりする。日本画という言葉は日本国内だけのものなのですよね。
田中武
ガイド:日展に出している田中武は、菱田春草の「日本人によって制作された絵が一様に日本画とみなされる時代を待望する」というフレーズから持論を展開して、日展日本画部にアクリルで描いた静物画を出しています。あんまり違和感ないですがね。
廣田:この春草の言葉の真意は今ではわかりませんが、日本人画・ジャパニーズペインティングということですよね、きっと。だから分類は必要ないということで、敢えて分類するなら素材でということになるのでしょうか。実際、海外に挑戦するにはそうなってしまっていますからね。
阪本トクロウ
立島:1995年第13回山種美術館賞展でアクリル画材だけで描いた現代美術出身の中上清が推薦されたこともあるしその後も日本画をめぐる議論は絶えない。最近では、阪本トクロウだってアクリル絵具だけだし。ボーダレスの加速なのかそれともグローバル化なのか・・・。
ガイド:ボーダレス、グローバル化という視点で具体的にはどんな作家がいますかね。
立島:フジイフランソワは興味ある作家です。いまいち素性がわからずにいるのですが、こないだの日経日本画大賞の時に少しだけ話しました。今度ゆっくり取材したい作家です。
池永康晟
ガイド:いまいち素性がわからない、というのがいいですね。阿部清子、池永康晟らもそんな「日本画家」ですね。
ガイド:これまでたびたび話題になってきた日本画の境界線ですが、今後海外のアートフェアやネットから若い世代がスッと出てきて話題をさらうようになると、「日本画」の定義も変わるかもしれませんし、定義そのものが風化してしまうかもしれません。どっちにしても、さり気なく時代の節目を作ってしまうようなスケールの大きなアーティストに出てきてもらいたいですね。本日はありがとうございました。
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