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『終末のフール』(2ページ目)

今もっとも注目を集める書き手の一人である著者の最新作。「3年後に世界が終わる」--未来なき世界を生きる人々それぞれの物語。

執筆者:梅村 千恵

■「世界が終わる」という共通の「悲劇」とは別にある、それぞれの人の「物語」。プラグラマティズムを超えて・・・

 「世界が終わる」というのは、圧倒的に悲劇的な、救いのない「物語」である。この世界に生きるすべての人に影響を与える圧倒的に大きな「物語」である。圧倒的に、暗い「物語」である。しかし、この「物語」の下で生きる人々には、それぞれに、きわめて瑣末な「物語」がある。それは、たとえば、その人々が抱える人間関係が織り成す「物語」である。その「物語」のいくつかは、「世界の終わり」という大きな「物語」に飲み込まれ、リセットされてしまうだろうが、同時に、飲み込まれず、リセットされない「物語」だってある。人は、この瑣末な「物語」も生きざるを得ない。その物語は、大きな物語が悲劇であることとはまた別の次元で、哀しかったり、切なかったり、あるいは滑稽だったりする。

 ある物語に登場するある少年の「家族」という物語は、世界が終わらなくても、「終わっている」し、ある物語に登場する女性の「恋」という物語は、世界が終わるにも関わらず、「始まる」のだ。

 それぞれの人が生きる「物語」を、たとえば、それぞれの「生き方」と言い換えるなら・・・
ある物語に登場するボクサーは、こう問いかける。

「明日死ぬとしたら、生き方が変わるのですか?」――

この言葉は、強烈に悲観的であると同時に、強烈に楽観的だ。

 設定からプラグラマティックな物語を想像した人は、おそらく、気持ちよく裏切られるだろう。ぜひとも、一読を。

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◆『陽気なギャングが地球を回る』が映画化されるんだそうです。うーむ、楽しみなような怖いような・・・映画に関する情報は、「公式サイト」で。その他、映像化作品の情報は、「映像化原作本をチェック」

■2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリ倶楽部賞を受賞してデビューした伊坂幸太郎。聞きなれない賞だと思われるかもしれませんが、実は、この賞、日本推理サスペンス大賞→新潮ミステリ倶楽部賞→ホラーサスペンス大賞と変遷しているのです。日本推理サスペンス大賞時代には、宮部みゆき、高村薫という巨頭を輩出しております。伊坂さんは、実は、同賞の最後(2000年)の受賞者です

この賞の経歴、候補作をチェックするなら「ミステリの部屋」が便利。おお、『犯人に告ぐ』雫井さんも同賞出身なんですね!

『溺れる魚』『なぎら☆ツイスター』など、異色作でおなじみの戸梶圭太は、1998年に同賞受賞でデビュー。公式サイト「TOKA JUNGLE」では、映像関係の活動もチェックできます。
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