■エンロン危機がした示唆する「株式会社・資本主義」の矛盾。日本は、その矛盾の先駆者!?
さて、エンロンが倒産した報道において、経営陣たちがストックオプションで巨額の富を得、会社がヤバくなるとさっさと自社株を売り抜けたことや、コンサルティング業務において大のお得意様であるエンロンに甘い監査を行っていた監査法人などの在りようをしって、アメリカの企業社会におけるモラルハザードを感じた人も少なくないだろう。ちなみに、筆者もその一人である。しかし、本書を読むと、エンロン危機が示すものは、個々人、あるいは一つの企業のモラルがどうの、というような問題ではないことに気付かされる。それは、経営者への権力集中、それをチェックするシステムの形骸化、あるいは、監査法人という存在のありよう、そして、何より、「すべてが株価上昇のために」行われる、現在の株式会社のあり方そのものに関わる問題なのである。
そう、ここまで書くと、おそらく多くの方が気付かれたであろう。経営者に対するチェック機能の不在、実態経済と乖離した株価に躍らせた経営・・・。これらの矛盾によって引き起こさせた社会的危機については、明らかにアメリカより日本の方が先行者である。バブル崩壊、ディスクローズが前提である株式会社であるはずの銀行の不良債権隠し・・・。
著者は、はっきり言う。「日本の巨大株式会社は病気にかかっている」と。さらに、日本型でうまくいかなかったと言って、アメリカ型の株価重視の資本主義を崇め奉るのも大きな誤りだと。そう、エンロン危機は、その株価重視の資本主義の矛盾そのものであるのだから。
今、日本という国に暮す大多数の人間にとって、企業は、その生活と切り離すことができない重要なファクターである。いや、日本だけではない。世界経済にとっても「企業」の存在を可逆的に19世紀の昔のありように引き戻すことなど、明らかに幻想である。
その意味で、現在の「株式会社」企業社会の矛盾を指摘する本書は、誰にとっても無縁ではない一冊だといえるだろう。
★あえて、アラ、捜します!
あの~、「会計」が大の苦手な私、こういう本を読むたびにいつも思うんです。「そこんとこ図を書いて説明してくれ~」と。ダメですか?
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