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読んだ気になるビジネス書<第2回> 『マネジメントの正体』(2ページ目)

マネジメント、組織行動学研究の第一人者である著者が、30年の研究を集大成した実践の書。簡潔かつ明瞭。採用、人事考課、変化対応など、組織マネジメントを成功させるためのヒント満載!

執筆者:梅村 千恵

■人々の多様性、状況の可変性を認めることから・・・

僭越とのご批判を覚悟で判断を下すなら、ある意味では、「ノー」だ。著者は「複雑な問題に対する普遍的な解決法はない」と断言、新しげなマネジメント理論に飛びつく人々を「ダイエットマニア」になぞらえる。ダイエットに王道なし、マネジメントに王道なし―「結局、そういう結論かよ」このレビューをここまで読んでくださった人の中には少々落胆された方もいるだろう。しかし、本書自体を読み通した方の中でそう思われる人は、かなり少数なのではないだろうか。もっと言うなら、企業の経営に携わる人、少人数のチームを率いている人、そして、遠からぬ将来そのような役割を担う人たちの多くに、意義深い示唆を与える優れた一冊であると思う。

さて、具体的な内容。「採用」、「モチベーション」、「リーダーシップ」、「コミュニケーション」、「業績評価」など、企業活動上で特に縦横であると思われるテーマごとに、「面接を上達させるには?」(採用)「部下がやる気を出さない理由」(モチベーション)、「リーダーらしく『見せる』には?」(リーダーシップ)など、きわめて実践的なトピックスを挙げ、組織行動学の理論や実際の企業における調査などを織り交ぜながら、簡潔にして明瞭な考察が展開されていく。

それぞれの洞察の妥当性もさることながら、類似書と何よりの相違点は、その理論がすべての人に、すべての場合に通用するわけではないことを、明快に言い切っていることだろう。モチベーションだけでは十分ではない、リーダーシップだけで切り抜けられない場合もある、万人にとって「よい仕事」はない、チームに向かない人もいる・・・。人々の多様性や、状況の可変性を十二分に意識した上で、マネージャーがいかなる原則を押さえておけばよりスムーズにストレスなく業務を遂行できるのか――著者のスタンスは、「たった一つの答え」など通用しなくなっている現状、もしくは未来により適合するものであると思う。新奇な展開や、専門的な用語はまったくといっていいほどない。手軽に読み進むことのできる一冊であるが、けっして、浅薄ではない。読むほどに、本当の意味での「実践智」に出会える深い一冊である。企業社会に関わる様々な立場の人にご一読をおすすめしたい。

★あえて、アラ、捜します!
派手さはないが、良書だと思います。本書自体に「アラ」を探せそうにないのですが、著者の著作がこれ以外には一冊しか邦訳されていないのが残念。

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