男のこだわりグッズ/文房具・小道具

少しだけ贅沢な鉛筆で書く日常の手触り

手に馴染んで、1本づつ違った個性を楽しめる、手塗りの鉛筆を2種類、そして、それらを入れておける漆塗りのペントレイ。日常生活に手作りの味わいと、手触りの良さを取り入れて、「書く」楽しさを。

納富 廉邦

執筆者:納富 廉邦

男のこだわりグッズガイド

塗りの鉛筆が手に気持ち良いということ

PH「えんぴつ - PH」5本セット、819円(税込)

このところ、ガイド納富は仕事と趣味の境界線上でずっと様々な手帳を使い比べていました。その時に思ったのは、手帳には意外に鉛筆が便利ということでした。まず、持ち歩く筆記具として軽量であること、書き直すことが簡単なこと、ほぼ絶対裏抜けしないこと(つまり紙を選ばないこと)、柔らかめの芯を使えば筆圧もさほど必要でないこと、ちょっとした図や絵が描きやすい(上手そうに見えたりする)ことなど、中々のメリット沢山なのです。そう言えば、昔は手帳と鉛筆がセットになっていたなあとか思い出します。

インセンスシダーで作った鉛筆に、一本一本手で白く塗ったマットな仕上がりの鉛筆。硬度はHB。

ただ、大人が鉛筆を使う際のネックとして、まず軽過ぎて力が入ってしまうことがあります。また、どうも持ち手がしっくり来ないとか、使っていて充実感が無いとか。とか思っていた時に、ハイタイドとパピエラボのコラボレーションによる、手作業で白く塗られた鉛筆「えんぴつ - PH」を試す機会がありました。これが、塗ってあるせいか、普通の鉛筆より少しだけ重くて、しかも、マットに仕上げられた塗りの手触りがとても良いのです。

手塗なので、一本一本、微妙に表情が違うのが面白い。

芯の硬さはHBで鉛筆の太さも普通のサイズで六角形と、基本スペックは通常の鉛筆と変わりません。強いて言えば、使われている木が柔らかめで、あまり研ぎ味の良くない鉛筆削りでも、スムーズに削れるのが、良い感じでした。ナイフでも削りやすい木だと思いました。本体には「DELIVERING THE WORDS PUT DOWN ON PAPER MAGIC OF PRINT TO WHOM YOU CARE」と書かれています。言葉を紙の上に定着させる魔法の杖としての鉛筆というコンセプトなのでしょう。

滑らずに、温かく手に馴染む持ち心地。マットな風合いは、手に持っても分かる。

手塗りなので、一本一本、微妙に塗りむらがあって違う感じで、ちょっと透けて地の木が見えている部分があったり、角の所が薄くなっていたりするのもあって、それが、作り手と使い手を繋いでいるような気分になれるのも、この鉛筆の魅力です。タイ製だし、職人仕事の工芸品ではないのですが、人の手仕事が感じられる道具は、それだけで使っていて嬉しくなるものです。

漆の塗り鉛筆は、さらに気持ちがいいということ

五十音「漆塗り鉛筆」
上から「春慶」1,600円、「津軽唐ぬり六角」2,000円、「津軽唐ぬり」各1,600円


手に気持ちがいい鉛筆といえば、ガイド納富が知る限りでナンバーワンなのが、五十音の「漆塗り鉛筆」です。この鉛筆、漆をしっかりと重ね塗りしてあるので、適度な重みがあって、さらに漆の柔らかな持ち心地が重なって、ちょっと手にするだけでも違いが分かってしまう、そんな鉛筆です。

「津軽 唐ぬり」は、津軽塗の伝統技法「唐ぬり」で仕上げたもの。斑点模様に色漆を重ねて、その色漆の層を研ぎだして作る。

価格的には、「えんぴつ - PH」の約10倍ですが、こちらは漆職人が一本一本仕上げているわけで、いわゆる工芸品でもあります。描かれた模様や、重ねて塗られているからこそ出る色の深みや味わいは、実際に使っているとちょっと感動的でさえあります。日本が誇る天然素材コーティング素材としての漆は、感触と素材保護の両方に優れているという事実が、鉛筆で字を書いているだけで実感できるのは、中々心躍る体験だったりします。

「春慶」は、透明漆を使って木目の美しさを出す技法。重ねて塗られた黒漆の角が透けて下地が見えるのが美しい。
「津軽 唐ぬり六角」は、六角形に唐ぬりを施す、手の込んだ仕様なので、限定生産で価格も少し高い。

価格的にも高いようですが、漆塗りの万年筆と比べると、気軽に買える値段と言えなくもないですし、高級万年筆に漆が使われているのも、そのコーティングによる耐久性と、使う内に手に馴染む温かい持ち心地によるものですから、元々、筆記具に合う素材なのです。しかも、五十音の漆塗り鉛筆は、基本的に硬度が「B」(一部、HBや2Bも用意されているけれど基本的には「B」のみです)、あと特別仕様の「津軽唐ぬり」の六角形のタイプは4Bのみと、柔らかい芯が使われています。この、漆の持ち心地と、柔らかい鉛筆ならではの書き心地の組合せが、書いていて気持ちいい、という状態を作ります。

優しく手にフィットする持ち心地がとにかく良くて、しかも硬度もBと柔らかいので、筆を使っているような気分で書ける

塗りについても、色々考えてあります。例えば、「春慶」は、2色塗り分けのシンプルなデザインですが、黒漆が角の部分だけ透けて地の色が見える感じにするために、鉛筆は六角形のものを採用。一方で、「津軽 唐ぬり」は、持った時の漆ならではの手に吸い付くような持ち心地のために丸鉛筆になっています。もっとも、この塗り方だと、六角形ではやたらと手間がかかるので、丸でないと職人さんが堪らないという事情もあります。なので、「津軽 唐ぬり」の六角形は特別仕様で価格も高くなっているわけです。また、銀座五十音のお店を訪ねれば、塗りや色が違う様々な鉛筆に出会えます。

塗りの鉛筆は塗りのペントレイがよく似合う

キリモト「PEN TRAY」10,500円(税込)

こんな塗りの鉛筆。もちろん、筆記具ですからどんどん持ち歩いて、手帳用に、アイディアスケッチ用に、打ち合せに、ガンガン使うのが愉しいのですが(実際、アイディアを考える時のメモというか、書いては消しの試行錯誤には、スケッチブック+鉛筆の組合せが最高です)、やはり高価だし、ちょっと見て楽しんだりもしたいものです。ということで、ガイド納富がお勧めするのは、漆塗りのペントレイです。

トレイの落ち着いた光沢のある「拭き漆」の技法と、鉛筆の華やかな漆や、マットな白の手塗りのマッチングがとても良い感じ。

漆を使った食器だけでなく、カードケースや一輪挿しまで作る、キリモトさんの製品ですから、漆の塗りはもちろん、道具として良く考えられていて、しかも見た目がキレイなペントレイですが、何より、ペントレイとして、やや深めに作られていて(トレイというより、ボックスという感じです)、さらに芯が出ている側は、トレイ本体にあたりにくく作られているといった機能性がたまりません。取り出しやすく、机の他のものとゴチャゴチャになりにくく、しかもキレイな筆記具を収納した時の雰囲気の良さは、他のペントレイにはない、この「箱」のようなトレイだけの魅力です。

ガイド納富の「こだわりチェック」

漆塗り鉛筆、えんぴつ-PHに、それぞれカステル9000番のキャップを装着。下に置いたノートは、やはりPHの「メモパッドPH」(上)と、「ノートパッドPH」(下)。活版印刷の表紙が味わい深い。

鉛筆の欠点といえば、削らなければならないということくらいで、でも、塗りの鉛筆は、その木の部分を削るのも、何だか楽しい時間で、面倒ならば、例えばファーバーカステルの「パーフェクトペンシル UFO」「カステル9000番」などの、キャップ部分を付けて持ち歩けば、削りたい時には削れるし、持ち歩くにもキャップが付くから便利だし、短くなった時のエクステンションにもなって便利です。

万年筆にもボールペンにも、木軸のものがあって、それは持ち心地を追求したものだけど、鉛筆は最初から木軸です。元々、工芸品的な部分がある文房具なのです(かつて、鉛筆は家具屋さんが作っていたという話もありますし)。そこに、丁寧に人の手で塗料や漆が塗られているのだから、気持ち良いに決まっているようなものです。最近、モノについて考えていて思うのは、持った時の気持ち良さが全てかもしれないということです。便利や機能は、その次というか、その気持ち良さが便利や機能を活かすのではないかと思うのです。

<関連リンク>

PHのサイトはこちら
ハイタイドのサイトはこちら
パピエラボのサイトはこちら

ボールペンと鉛筆の店、銀座五十音のサイトはこちら

キリモトの「ペントレイ」はアシストオンで購入できます

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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