常に身近に置いておける万年筆が欲しい

ペリカン「スーベレーン M300」31,500円(税込)
 

万年筆を日常の筆記具として使うようになって、もう5年ほどになります。それ以前もいざという時は使っていたのですが、メモも取材も落書きも、最近はイラストなども全て万年筆を使っています。主に愛用しているのは、ペリカンの「M205 トラディショナル」という一万円の、ペン先もスチールのものですが、万年筆という筆記具の魅力は、十分味わえます。

インク吸入機構を内蔵した万年筆の中で最も小さい部類に入る

そんなガイド納富ですから、それほど高価な万年筆が欲しいとは思っていませんでした。ただ、ずっと前から好きで、その後、取材でお借りしたり、メーカーに取材したり、使っている人を見たりしている内に、ますます欲しくなって、ようやく購入したのが、ペリカンの「スーベレーン M300」という、小さな万年筆です。小さいと言っても、ペリカンならではのサイズバランスの良さで、単体で見ると、いわゆるスーベレーン・シリーズの一本として、普通の大きさに見えるかも知れません。

しかし、実際に手に取ると、本当に細くて小さくて、でも、このサイズに、他のスーベレーン・シリーズ同様、インク吸引システムが内蔵され、ペン先は14金で、ペリカンならではの彫金も施されています。そして、この小ささですから、手帳などと一緒に、常に身近に置いて、必要な時にさっと使う事が出来るのです。購入して、実際に自分のものとして使い始めると、さらに魅力が見えてきます。そのくらい、気に入っているという事だと思うのですが。

柔らかいペン先と自分に合ったペン先

ペリカンの万年筆の中でM1000と並ぶ柔らかいペン先を持つ
 

M300の特徴として、そのサイズ以外に、ペン先がとても柔らかいという点が挙げられます。ペリカンの方に聞いた所、昔に比べて全体にペン先が固くなったスーベレーン・シリーズの中で、M1000M300だけが例外的に柔らかいままなのだということでした。確かに、そのペン先は柔らかく、F(細字)のペン先でも、少し筆圧をかけると、M(中字)くらいの太さの線を書く事ができます。細くて小さいのに、M1000並の柔らかいペン先というところに、ガイド納富はとても惹かれました。実際、購入したのはFのペン先なのですが、とてもしなやかに、柔らかく書けるので気に入っています。

筆圧やペンの向きで、文字幅をコントロールできる
 

しかも、柔らかいペン先は、筆圧をかけないで書くのに向いたペン先ですから、この小さなサイズでも長く書いていて疲れないというのも嬉しい点です。逆に言えば筆圧が高い人には向かないのですが、今回、様々なM300を試し書きさせてもらって感じたのは、同じM300のFのペン先でも、様々な個性があると言うこと。つまり、M300のFの中にも、筆圧が高い人が書き易いもの、筆圧が弱い人が書き易いものが存在すると言うことです。実際、同じ種類の軸で、同じ太さのペン先なのに、書き味が全然違うことに驚かされます。

ペン先の仕様は、プラチナ装飾の14金。写真のペン先はFタイプ。

店頭で、ショップの方(その時は、毎週土曜日に日本橋三越で万年筆の相談を受けておられる、ペリカンの山本英昭氏に見ていただきました)に、様々なペン先を出してもらい、試し書きして、その上で、さらにショップの方に選んでもらって、それを書き比べて、といった作業を重ねる内に、「これは書き易い」というペン先が見つかりました。万年筆は個体差が激しい製品だと言うことは、頭では理解していたのですが、実際にここまで違うものかと、自分でも驚いてしまいました。柔らかいか固いかより、その柔らかさが自分に合うペン先を見つけることが大事なのですね。

インク吸入システムで選ぶ万年筆

軸が半透明になっていて、中のインク吸入機構が見える。ここからインクの残量も分かる仕掛けだ

M300のさらなる魅力は、これだけ小さいのにインク吸入システムが内蔵されていることです。これまで、いくつかの万年筆を使ってきた経験からも、また、万年筆と言う筆記具のシステムからも、「書く際の安定感」は、カートリッジやコンバーターに比べて、吸入システム内蔵型が圧倒的に高いのです。カートリッジの場合、インクも空気もカートリッジからペン先への一方通行です。それだと、インクも詰まりやすく、またインクの色を変えたい時も一苦労です。コンバーターの場合は、インクも空気も双方向に流れるので良いのですが、インクの通り道が狭く、インクフローが安定しません。インクの収納量も少ないですし、書き始めに擦れることも多いのです。

ラミー「サファリ万年筆」と比べると、M300の小ささが分かると思う

小型の万年筆で、インク吸入システムを内蔵しているモノは滅多にありません。セーラーの「プロフェッショナルギア」のポケットサイズで長刀研ぎのモデルなんて、もう欲しくて欲しくてたまらないのに、購入に踏み切れないのは、インクがカートリッジ式だからです。仙台大橋堂や、中屋万年筆も、とても魅力的なのですが、インクはコンバーターで入れる事になります。もちろん、コンバーターはカートリッジに比べれば、ほとんど問題はないのですが、内蔵型、特にペリカンの万年筆のスタートダッシュの良さと、インクフローの安定感は、仕事用の筆記具として、とても魅力的なのです。

また、セルロースとプレキシグラスを積み重ねて作られたストライプや、そのストライプが一部半透明になっていて、インクの残量が確認出来ること、キャップの密閉性の高さ(そのため、書き始めが擦れないのだそうです)、インク吸入システム自体の精密度の高さなど、それらはスーベレーン・シリーズ共通の機能なのですが、それが、M300の場合、この小さなボディに、これでもかと詰め込まれていることに、感動してしまうのです。

ガイド納富の「こだわりチェック」


と、M300の魅力を熱く語ってしまったのですが、直接の購入動機は、現在、仕事用のノートとして常に持ち歩いている、銀座五十音のノートカバー「ごらん」に挿すための万年筆が欲しかったということです。取材やメモをとるのに使う万年筆として、このコンパクトなサイズも含めて、とても理想的だと思うのです。

そんなペンを、じっくりと選んで、ペン先も自分にぴったりするものを購入出来たのは、とても嬉しいことです。実際に、仕事で使っていても、本当に書き易いのです。まだ購入して一週間と少しなのですが、まるで、ずっと使ってきたように、手に馴染みます。好きなペンというのは、要するに、大好きで欲しくて、それをプロに吟味してもらって、その上で自分で選んで購入して、さらに肌身離さず使い続けてしまう、そういうモノを言うのではないかと思うのです。
<関連リンク>

丸善のスーベレーンについての解説ページ
丸善のペリカンについての解説ページ
万年筆専門店フルハルターのスーベレーン解説ページ

ペリカン「M200」を紹介したガイド記事はこちら
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