3万円前後で買えるイヤホンを聴き比べてみた

iPodの普及以降、コンシューマ向きのイヤホンの音はとても良くなったと思います。3000円以下のモノでも、MP3などの圧縮された音を外で聴くなら特に問題なく快適に音楽を楽しむ事が出来ます。しかし、元々、イヤホンの小さな本体では、幅広い音域をカバーするのは難しいので、どうしてもある程度以上の音質を求めると高価になってしまいます。

そして、高価なものは、どれもある程度以上の音質は実現しているので、多分、どのイヤホンが音が良いかという比較は出来ないと思うのです。ガイド納富が高価なイヤホンと安価なイヤホンを聴き比べた時に一番感じるのは、音が良いかどうかというよりも、音そのものが真直ぐ耳に入ってくる感じの心地よさや、臨場感、音それぞれが空間のどこかにきちんと位置している感じ、といった部分です。

要するに、その音が気持ち良く耳に、頭に、入ってくるかということで、その気持ち良さは、中々安価なイヤホンでは味わえないものだと思うのです。また、高価なイヤホンになればなるほど、そのイヤホンが得意とする音楽がハッキリするような気もします。音を良くするという行為は、多分、イヤホンを設計する側が考える「心地よさ」に近づける作業で、それは、全ての音に満遍なく、という程度では実現出来ないレベルの話だと思うのです。

ということで、今回、聴き比べた3万円前後のイヤホンをベスト5形式で紹介していくのですが、その順位はあくまでも、ガイド納富が心地よく感じた順ですので、音の良し悪しとは違うと思います(耳への付け心地なども含まれますし)。比較には、ピンクフロイド「狂気」、イエス「こわれもの」、クイーン「オペラ座の夜」、レッド・ツェッペリン「聖なる館」をAppleロスレス形式でiPodに入れたものを使用しました。また、それらの音源を聴いて「もしかしてアコースティック楽器に強いのかな」とか思ったら、その都度、他の音源を試したりしながら聴き比べました。

5位
今までに聴いた事がない自然な低音
M-AUDIO「Super.fi 5 EB」実売価格24990円

M-AUDIO「Super.fi 5 EB」実売価格24990円

順位は五位ですが、低音部分の豊かさや気持ち良さは、今回試した中でもナンバーワンです。元々、低音を強調した音作りのイヤホンは好きではなかったのですが、この「Super.fi 5 EB」を使ってみて、きちんと身体に響く低音をイヤホンで実現出来るという事実に感動しました。
コードは細くて透明。軽くて丈夫なケーブルだ

その秘密は、多分、高音域用には現在高音質と言われるイヤホンのほとんどが採用しているバランスド・アーマチュア方式のドライバを使い、低音域にはアナログ感溢れるアクティブ型のドライバを使うという2Way方式にあるのでしょう。無理に強調した訳ではない低音域は、例えばピンクフロイドの「狂気」の冒頭の心臓の鼓動音や、ツェッペリンのジョン・ボーナムのバスドラの響きなどの心地よさに繋がっていると思いました。

ケースと各種イヤーパッドが付属する

低音だけでなく、全体にボリューム感のある音作りで、低音域が自然に鳴るせいか、どっしりとした重厚な音楽に似合うように思いました。古いクラシックや古いロック、グルーブを重視したファンクといった音楽にとても合っていると思います。ケーブルもしっかりしているし、付属のポーチもコンパクトで、モノとしても丁寧に作られています。

本体側のコードには針金が入っていて耳にかけやすいように曲げることができる

ただ、ガイド納富としては、やや本体が大き過ぎるのと、装着に多少時間がかかる事が気になってしまいました。また、付属のシリコンイヤチップの遮音性があまりよくないので、しっかりとケーブルを耳の後ろに回して、何度も装着し直さないと、快適なポイントで聴けないのです。その代わり、きちんと装着出来た時の音は素晴らしいので、このあたりは用途次第ということでしょうか。

4位
バランスの良い優しい音
オーディオテクニカ「ATH-CK10」希望小売価格37800円

オーディオテクニカ「ATH-CK10」
希望小売価格37800円

今回聴き比べたイヤホンの中でも、装着のしやすさや、コンパクトさ、ケーブルの取り回しやすさといった使い勝手の部分では文句無くナンバーワンだったのが「ATH-CK10」です。1.2mのコードもちょうど良い長さだし、本体もコンパクトで耳への負担がとても軽く、持ち歩いて使うのが楽でした。そういう意味では「Super.fi 5 EB」の対極にある感じです。

音に関しては、とてもバランスが良いと思いました。バランスド・アーマチュア方式のドライブを2台搭載した2Way方式のせいか、低域から高域まで歪む事なくスムーズに音が出るので、どんな曲でも苦手とする事なく聴けると思いました。音は柔らかめでインパクトには欠ける音作りなのですが、その分、長く聴いても聴き疲れが少ないようです。それは、ステンレスのボディのコンパクトさのおかげでもあると思います。

しなやかで縺れにくいケーブルを採用

一応、耳の後ろを通して耳に入れる方式が推奨されていますが、本体がコンパクトでケーブルが柔らかいので、直接耳に入れてから調整しても十分にリスニングポイントが見つかります。大人しい音ではあるのですが、音量を上げても歪まないので、迫力不足だと感じると音量を上げて聴いていました。クイーンのような音の輪郭がハッキリしたものより、ツェッペリンのような音全体が一つの塊になっているような音楽が向いているようです。

また、J-POPなどでは音の輪郭があらかじめ強調されていたりするので、このイヤホンくらいの輪郭の優しい感じは、耳当たりが良くて心地よいと思いました。特にどこかの音域が強調されているという感じもないので、聞き飽きない音だと思います。欲を言えば、もう少し遮音性が高ければ、もっとスッキリとした音になるような気がします。もっとも、遮音性と装着しやすさのどちらを取るかという問題にもなるわけで、気軽に良い音を、と考えれば、このバランスがちょうど良いのかも知れません。

次のページでは、3位のゼンハイザー「IE7」、ERの「ER-4S」を紹介します