眼鏡ケースの難しさ
m+(エムピウ)「ROTOLO occhiali」
11,130円(税込) |
ガイド納富は眼鏡ケースを探し続けています。世の中、これだけ眼鏡のファッション化が進み、機能的で、丈夫で、スタイリッシュで、掛けやすい眼鏡が広く普及している中、何故か眼鏡ケースは、決定版的なものもなければ、個性的なものも少ないのが現状です。ただ、ユーザー側から見ると、何故良い眼鏡ケースが無いんだ、とか簡単に言ってしまいますが、作る側からすると、眼鏡ケースはかなり難しいものなのかも知れません。
それは眼鏡自体の使われ方が様々だからです。例えば、ガイド納富の場合、外に持ち歩いて必要な時だけ眼鏡をかける、という使い方をします。その時に必要なのは、片手で出し入れが出来る、なるべくスリムなもの。その一方で、旅行などに持っていく際の、きちんと眼鏡を保護してくれるケースも必要だし、サングラス用のライトなもの、家の中で保管するためのもの、など、用途や使う眼鏡によって、それぞれ違ったケースが欲しくなるものです。
その全てを一つのケースで、と考えると、眼鏡を作る時にオマケで付いてくる、樹脂や合成皮革のケースになるのでしょう。どれかの要素に便利に、と考えて作ると、とても狭い範囲でのみ便利なケースになってしまい、売るのが難しくなってしまいます。ユーザーが「コレ」と思うようなケースが中々無いのも、無理はないことかもしれません。
そんな中で、革を構造的に考えて、様々なアイテムを生み出してきたm+(エムピウ)が作った眼鏡ケース「ROTOLO occhiali」は、良い革を使うことで、従来の眼鏡ケースのいくつかの問題をクリア。ロール型の構造と合わせて、眼鏡のオマケ的なケースとは一線を画すケースになっていました。
良い革の風合いと丈夫さが眼鏡を守る
良質の革を筒状に巻いて眼鏡を収納する
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この「ROTOLO occhiali」の第一印象は、やけに革が良いなあ、ということでした。眼鏡ケースやペンケースのような、シンプルな形の方が使いやすいしルックスも良くなるタイプの製品の場合、ルックスの良し悪しの多くは、材質で決まります。特に、眼鏡ケースのように、ある程度面積が広くなる製品は、素材の質感の良し悪しが分かりやすく、しかし、無闇に良い革を使って価格を上げるわけにはいかないため、素材の選定センスが出来を大きく左右します。
「おかげで、ちょっと高くなっちゃったんですよ」とm+主宰村上雄一郎氏は言っていましたが、それでも、この革を使いたかったのだなあと思わせる、そんな説得力のある革が使われているのです。特に、一枚革を巻いて筒型にした構造は、丈夫でしなやかな革を使わないと成立しません。デザインと構造に合わせて慎重に革を選択するm+ならではの製品と言えるでしょう。
イタリア製のタンニン鞣しの革はオイルを多めに含んで、丈夫ながらも触り心地は柔らかく、使い込んだらどれだけ良い感じに育つんだろうと期待させる感じです。色は黒と茶色の2色ですが、特に写真でも取り上げている茶色の色の良さ、風合いの良さは相当なものです。写真では、その魅力を伝え切れないのが残念ですが、この革の良さだけで、ガイド記事を書きたいと思いました。それほど良い感じですし、中の眼鏡に対して、安心感がある素材だと思いました。
眼鏡のサイズを選ばない筒型構造の柔軟さ
一枚革を贅沢に使った構造。内装は人工スエード
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裏地は眼鏡を傷付けずに守る手触りの良い人工スエードを使用。マチは高級感のあるPスエード、眼鏡を固定する部分も表と同じ革を使用。しなやかなので巻き取るのに力は要らず、くるくると巻き取ることが出来ます。マチが深く取ってあるので、かなり適当に眼鏡を放りこんでも、きちんとケース内に収まり、そのまま巻き取れるので、出し入れもスムーズです。見た感じよりも、本当に楽に出し入れが出来るので、ちょっと感動します。
かなり大きなサングラスや、弦の部分が太くなっているものなど、市販のケースには入らない眼鏡も、スムーズに収納可能。巻き付けるタイプなので、中に入れる眼鏡の大きさに合わせてくれます。
細身の眼鏡を入れても、中でガシャつくことはありません。留め具がゴムになっているので、中の眼鏡のサイズに合わせた巻き具合に勝手に調整してくれます。この筒構造の柔軟さは、革の選択と直径、マチのサイズ設定などに定評があるm+ならではだと思います。
留め具の擬宝珠にもこだわりと使いやすさが
ゴムと革と擬宝珠を巧みに組合せてある
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ゴムで引っ張って、擬宝珠で留める構造も、試行錯誤の上で生まれています。留めるベルトがゴムなのは、眼鏡のサイズにジャストフィットさせる目的もありますが、それ以上に、巻き取った時に正確に丸めなくても、擬宝珠で留められる、多少の緩さを持たせるためなのだと思うのです。ベルトがゴムだと、斜めに巻き取ってしまっても、擬宝珠で留めてから、小口を少し押してやれば、きちんと筒型になります。それだけのことですが、使い勝手には大きく影響するのです。
擬宝珠の金属パーツには真鍮が使われ、アンティーク風のメッキが施されています。長く使うと、中の真鍮色が出てきて、それもまた良い風合いを作ることでしょう。本来、一万円以内に抑えるつもりで設計士ながら、僅かながら一万円を超えてしまったのは、こういう細部への目配りこそが、良い眼鏡ケースを生むということを理解して作っているからだと思います。
次のページでは、眼鏡ケースと同じように、上質の革を上手く使いこなしたm+のカードケースを紹介します。