「○○付きペン」の便利さと難しさ
シヤチハタ「ネームペン サイン」 |
前に、このガイド記事で「千円以下で買えるギミックボールペン・ベスト5」を紹介しました。ボールペンに他の機能をくっつけたギミックペンは、それだけで楽しく、心弾むグッズですが、それだけに、一歩間違うと簡単に悲しいグッズになってしまいます。しかも、千円以下くらいなら、まだ洒落で済むのですが、数千円となると悲しいだけでは済みません。
昔からある、印鑑付きのボールペンも、その便利さは分かるのですが、そのスタイルを見ると、何故、そうまでして印鑑とペンをくっつけなければならないのかと思ってしまう出来でした。あの、後ろが妙に膨らんだスタイルは、しょうがないとは言え、見るからに使い難そうで、でも、確かに、普段使っているペンに印鑑が付いているという便利さには説得力があるので、あれはああいうものとして認知するしかないのだろうと思っていました。
元々、ギミックペンが好きなガイド納富ですから、印鑑付きペンにも期待はしていました。それでも、初めてシヤチハタの新しい印鑑付きペン「ネームペン・サイン」を見た時は、ちょっと感動しました。そこには、想像を越えた、でも見てしまうと正解だとすぐわかるような、とても自然な形の印鑑付きペンがありました。プロダクトデザイナーの深澤直人さんによるデザインだそうですが、これは見事な仕事だなと思ったのです。
印鑑であることを忘れないシヤチハタの心意気
9mm径のシヤチハタネームを内蔵
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シヤチハタの「ネーム」は、ガイド納富も使っていますが、本当に良く出来た製品だと思います。インクの濃度といい耐久性といい、小さいものはストラップに付けるサイズから、大判のサイズまで選べるフレキシビリティといい、印鑑を使う事が多い日本の生活スタイルの中では手放せない、ステーショナリーの名作の一つです。その「ネーム」をペンと合体させるというのは、コンセプトとして正しいと思うのですが、印鑑は印鑑に必要な直径があり、それがペンの軸より太くなってしまうのが、印鑑付きペンのネックでした。
この「ネームペン・サイン」とほぼ同時期に出たシヤチハタとパーカーのコラボレーションによる印鑑付きペンを触る機会もあったのですが、パーカーをもってしても、後ろが膨らんでしまっていました。もちろん、従来のモノに比べれば、ペンとしてキレイに仕上がっていたのですが。
「ネームペン・サイン」を見て気がついたのは、デザインをペンに合わせていたから失敗していたのではないかということ。印鑑であることを隠さないことが、ペンと印鑑を合体させる際のポイントだったようなのです。このペンのデザインをじっくり見ると、確かに変わった形をしているのですが、不思議と奇を衒っているようには見えません。で、何に見えるかというと、印鑑とペンに見えます。その無理をしていないからこそ感じられる自然さが、この製品全体の魅力になっていると思うのです。
印鑑部分に付いた黒いポッチは印鑑の上下を示すものですが、これが同時に、転がらないようにするためのストッパーにもなっています。もちろん印鑑部分は交換も出来ますし、インクの交換も可能。その印鑑の機能はお墨付きの「ネーム」ですから、安心して使えます。
ペン先がブレ難い二段繰り出し式のボールペン部
二段繰り出し式のボールペン部分
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ボールペン部分も、ちょっと変わっていて、軸を回転させると、ペン先からまず黒い筒が出てきて、さらに回すとペン先が出てくる二段式。これは、ペン軸の先を細くすると印鑑部分とのサイズのバランスが合わなくなってしまう(後ろが膨らんだ印象を与えてしまう)ために考えられたデザインと機構なのでしょう。そのおかげで、印鑑部分とペン部分が乖離せず、一つの製品としてまとまっています。
しかも、それだけでなく、ペン先を支える軸を繰り出し式にしたことで、ペン先が軸にしっかりと固定され、ノック式や繰り出し式のペンにありがちな、ペン先のブレが少ないのです。おかげで、かなり書きやすいペンに仕上がっています。このデザインのおかげで、後ろが重過ぎるということもありません。普通に使えるボールペンになっています。
色も、写真のバーミリオンレッド、クロームシルバーの他、ブラックが用意されています。ガイド納富的には、印鑑のムードを漂わせるバーミリオンレッドがイチオシ。印鑑らしい「朱色」は、漆塗りのようなムードがあって、普段遣いのペンとしても何となく和のテイストが感じられて面白いと思います。
ガイド納富の「こだわりチェック」
この「ネームペン・サイン」のような、この機能を持たせるなら、このデザインしかない、と思わせてくれる製品が、新製品として登場するのは、とても珍しいと思うのです。ハサミや鉛筆が今の形なった瞬間は見たことがありませんが、きっと、こんな感じだったのではないでしょうか。機能とデザインが合わさって一つの「形」が出来上がる瞬間の面白さです。
注文を付けるとすれば、もう少し印鑑部分のインクを入れるスペースを多くとって欲しかったのと、印鑑のキャップが取り外し式だということ。特に、印鑑のキャップは、せっかくなら取り外さずに開閉できると、通常の「ネーム」さえ越える使い勝手の良さになるはずです。ある程度の価格が取れる、このような製品だからこそ実現してもらいたい機能です。
印鑑部分も、通常の印鑑の他、別注で字体が選べたり、ロゴマークなどの印も作れるなど、カスタマイズ可能なのも楽しいですね。印鑑の色も6色から選べます。最も高価なロゴマークなどの別注でも4,725円(税込)というリーズナブルな価格も良いですね。何気ない製品ではあるのですが、その細部まで気配りの行き届いた完成度は、ステーショナリーの名品と言っても良い製品だと思うのです。少なくとも、ガイド納富は、これを見て初めて、印鑑付きのペンを持ちたいと思いました。
<関連リンク>
・シヤチハタ「ネームペン・サイン」の公式サイト
・シヤチハタの公式サイト
・シヤチハタとパーカーのコラボ「NAMEPEN・PARKER AIRFLOW」
・「1000円以下で買えるギミックペン・ベスト5」のガイド記事