ノギスを内蔵したメタルボディのボールペン
クレオ・スクリベント社 |
普通、定規にもなるペンとか、長さが計測できる筆記具というようなものは、デザイン優先の遊び心を大事にする製品であることが多いものです。ところが、このドイツの筆記具メーカー、クレオ・スクリベント社の「メッソグラフ」は、ノギス機能がある筆記具というより、精巧なノギスに筆記具機能を付けたというような、見事な実用品なのです。
クレオ・スクリベント社は、スターリングシルバーの仕上げが見事な六角形のペン「シルバーサイン」や、ブラック&シルバーのシャープで大人なデザインが気持ち良い万年筆「シフレ05」など、高い機能をスタイリッシュにまとめるのが上手いメーカー。この「メッソグラフ」も、計測器としての能力を損なわないように、軸は真鍮製、可動部分はアルミダイキャストと全てのパーツが金属製。その徹底ぶりは、クリップを二本のリベットで留めていることからもうかがえます。
それでいて、スマートさを失わないデザインセンスは、流石、工具や筆記具といった「道具」を愛するドイツのメーカーの作品。こういう製品が生まれるのも、「道具」が身近にあり、クラフトマンシップを大事にする国民性なのだと思うのです。実際、この「メッソグラフ」は、本当に精巧に出来ていて、計測部分をスライドさせる時の硬くもなく緩くもない絶妙の動きなど、本当に感動的です。
いつでも手に取れる位置にノギスがあるのは意外に便利
0.1mmまで測れる精巧なノギス機能
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このペンを入手して机の上に置いておいたら、日常生活の中でモノの長さを測りたいと思うことが意外に多いことに気がつきました。ちょっと持ちやすいペンがあると、その直径が気になったり、愛用のグラスの飲み口の直径や、名刺の理想のサイズを決めるための長さ比べなどなど、ノギスがあるなら測っておこうと思うことは、結構多いものです。
しかも、定規と違いノギスですから、直径などの立体物の厚みや太さを測ることが得意。さっと挟むだけで簡単に長さが測れるので、面倒くさいと言うことがありません。また、ノギスとしての出来が良いので、信頼性も高く、本当に使いやすいのです。目盛りはミリメートル/センチメートルとインチの両方が付いていますし、ボルト・ナットの直径の換算表も付くなど、小型のノギスとしての機能は十分。目盛りはミリメートル単位ですが、可動部分についた目盛りで0.1ミリ単位で長さを測ることまで出来るのです。
ペンの全長は152mm、重さは約35g、ノギス機能としては最大90mmまで計測できます。軸のクロームメッキされた光る銀色と、可動部分のアルミダイキャストによるツヤ消しの銀のコントラストは、金属製品を知り尽くしたデザイン。平たい六角形の軸は、持ちやすいとは言えないのですが、それでも書きにくいというほどのことはなく、これだけの高機能なノギスに筆記具を付けるに当たっての、ギリギリの妥協点が、この特殊な形状の軸だと思うのです。
実はドイツの交通事情が生んだ「工具的筆記具」
ペン先とクリップ部分でタイヤの溝の深さを計測 |
それでも、ここまで精巧なノギスを筆記具と組み合わせる必要というのは日本ではあまり考えられません。でも、ドイツではこの道具はかなりの実用品なのだそうです。その大きな利用目的は、自動車のタイヤの溝の深さを測るためなのです。ドイツは、溝が浅いタイヤの取り締まりが厳しいらしく、マメにタイヤの溝の深さをチェックする必要があるのだそうです。
ノギス部分を一番下まで動かすことで、クリップの部分がペン先より前に出るのですが、この状態で、ペン先とクリップの先の長さが測れるようになっているのです。つまり、この状態でタイヤの溝にクリップ部分を差し込めば、溝の簡単に深さが測れるわけです。
この機能、日本ではあまり関係ないのですが、それでも、本棚の下に出来る隙間の幅とか、板の厚さとか、1cm以下のものの深さを測る機能と考えれば、意外に使い道はあるものです。
ガイド納富の「こだわりチェック」
ガイド納富の机上ペンセット
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写真は、ガイド納富の仕事机の上に置いているペンスタンドです。息子がレゴで作ってくれたものですが、このスタンドに普段立てているのが、右から、ラミーの子供用万年筆「Lamy abc」、ファーバーカステルの「UFOパーフェクトペンシル」、そしてクレオ・スクリベント社の「メッソグラフ」の三本。奇しくも全部ドイツのメーカーの製品です。普段遣いの筆記具としての「abc」、アイディアメモやスケッチ用には鉛筆が良いので「UFO」、そして計測器具兼油性ボールペンとしての「メッソグラフ」。このセットは仕事に欠かせません。
この「メッソグラフ」を使っていて思うのは、ドイツの「使える道具」を作る技術とアイディアの確かさです。細部まで、何と真面目に作られているのだろうと感心する一方で、本当にさりげなく便利な日常的な道具でもある、その手への馴染み具合にも驚いてしまいます。筆記具として、工具として、そして何より「使えるツール」として、クレオ・スクリベント社の底力を感じさせてくれる「メッソグラフ」。こういうツールが手元にあるというだけで、ガイド納富は嬉しくなってしまうのです。
<関連リンク>
・クレオ・スクリベント社の「シルバーサイン」はこちら
・クレオ・スクリベント社の「シフレ05」はこちら
・やまかつさんのブログの「メッソグラフ」の使い方
・ファーバーカステルの「UFOパーフェクトペンシル」を紹介したガイド記事「ファーバーカステル「パーフェクトペンシル」の謎を解け」
・Lamy abcの芯ホルダーはフラナガンさんで買えます