鉄道/観光・イベント列車

お座トロ展望列車!

お座敷車両、トロッコ車両、展望車両と3種類のイベント車両をつないだ「お座トロ展望列車」は福島県を走る会津鉄道の人気列車だ。どの車両に乗るかも迷うが、車内でのイベントも楽しい。特にトロッコ車両では、トンネル内で車内を暗くして屋根に星空を映し出すイベント、絶景が楽しめる鉄橋上で停車するサービス、車内で景品があたるじゃんけん大会と盛りだくさんだ。

野田 隆

執筆者:野田 隆

鉄道ガイド

3種のユニーク車両を連結した会津のお座トロ展望列車

様々な車両が走る会津鉄道。右がお座トロ展望列車

様々な車両が走る会津鉄道。右がお座トロ展望列車

首都圏から福島県の会津若松へ鉄道で行くには、JRの東北新幹線と磐越西線を乗り継いで行く他には、東武鉄道、野岩鉄道、会津鉄道を乗り継いで行く方法がある。かつては国鉄の盲腸線だった会津線は、野岩鉄道ができて東武線とつながったことにより、俄然脚光を浴びて観光路線へと発展した。今では第三セクター会津鉄道として独創的な観光客誘致作戦を展開している。多種多様な車両が走り、これだけでも楽しい鉄道だが、とりわけユニークで人気があるのが「お座トロ展望列車」である。
3種3様の車両から編成されるお座トロ展望列車

3種3様の車両から編成されるお座トロ展望列車

最後尾のお座敷車両は先頭の展望車両とは異なった外観だ

最後尾のお座敷車両は先頭の展望車両とは異なった外観だ

お座トロ展望列車は、3種類の異なった車両で編成された列車だ。つまり、お座敷車両+トロッコ車両+展望車両から成り立ち、略して「お座トロ展望列車」というわけだ。

掘りごたつにテーブルが置かれたお座敷車両の車内

掘りごたつにテーブルが置かれたお座敷車両の車内

お座敷車両は、ほぼ真ん中の通路を挟んで掘りごたつの座席がずらりと並ぶ。東側には2人が向かい合うように小さなテーブルが配置され、西側は4人でテーブルを囲めるようになっている。さわやかな気候だったので、みんなトロッコ車両に座ってしまったようで、お座敷車両は閑散としていた。

 

爽やかな自然の中を走るトロッコ車両の車内

爽やかな自然の中を走るトロッコ車両の車内

トロッコ車両は、夏季は窓ガラスがはずされ爽やかな風に直接触れることができる。トンネル内ではひんやりした冷気が心地よい。それぞれのテーブル席は、いずれも誰かが座っていて、相席にはならないですむといった混み方だった。

 

窓が大きくゆったりした車内の展望車両

窓が大きくゆったりした車内の展望車両

展望車両は、ゆったりしたシートに座りながら広々した窓から車窓を楽しめる。前面展望も可能だが、常に会津若松寄りに連結されているので、会津若松に向けて北へ進むときにのみ前面展望を味わえる。会津田島行きのときは、列車最後尾からの去り行く展望を眺めることになる。

この列車に乗るには、運賃の他に300円の整理券が必要だ。座席数だけ発売されるから座れないことはないが、指定席ではないから、どこに座れるかは乗ってからのお楽しみだ。いつも満員ということはなさそうで、私が出かけたときは休日にもかかわらず、当日乗車直前に駅で整理券を買ったほどだ。トロッコ、お座敷、展望車の希望を言って整理券を買うことになっている。

運転区間は会津若松と会津田島間で、全区間乗り通せば1時間半近い旅が楽しめる。全区間乗ってもいいが、湯野上温泉駅と芦の牧温泉駅の間でも、さまざまなイベントが楽しめるので、最低この区間だけでもこの列車の面白さは分かるだろう。なお、列車は会津若松発が1日に2本、会津田島発が1本という変則的な本数で運行される。途中でいくつかの駅にのみ停車する快速列車だ。

2009年は11月15日までの毎日運転される。12月と1月は運休で、2月は土日祝日のみ運行。2010年3月以降の運行計画は未定だ。

茅葺屋根がユニークな湯野上温泉駅

茅葺屋根がユニークな湯野上温泉駅

日本唯一の茅葺屋根の駅舎として最近とみに有名になった湯野上温泉駅。会津鉄道沿線の観光名所として多くの観光客が途中下車するようになった。ユニークな駅舎の魅力もさることながら、駅舎内には土産物屋のほかに囲炉裏のある待合所が設けられていて、くつろぎながら列車待ちの時間を過ごすことができる。

次に来る列車が、お座トロ展望列車だったので、整理券はあるかと聞いてみたら、あるとのこと。休日のため満席を覚悟していたので、ちょっと拍子抜けした。

ホームでしばらく待っていると南から会津若松行きの列車がやって来た。先頭は青い塗装の展望車両である。そのあとに窓周りが黒で下半分が黄色のトロッコ車両とお座敷車両が続く。整理券には「トロッコ整理券」と記されていたので、真ん中に連結されているトロッコ車両に乗り込む。両開きのドアは、車体の外にはみ出る変わった構造で、これによってこの車両の改造前の素性がキハ30系だと判明する。

テーブルがあって飲食もできるトロッコ車両

テーブルがあって飲食もできるトロッコ車両

乗り込むと、テーブル付きの向かい合わせ座席は空席がいくつかあり、好みの場所に座ることができた。乗客以外に、風変わりな衣装に身を包んだ人たちがいるのが目に留まった。鎧兜姿の武士のようないかつい人や仙人のような着物を着た老人がいる。いずれも車内でイベントを行う人のようで、すでに乗っていた乗客と談笑していた。

 
列車は走り出すと、窓ガラスがないので風がきつい。帽子を被っていたら飛ばされそうだし、胸ポケットに入れた乗車券が飛んでしまいそうだ。慌てて、乗車券はカバンにしまいこんだ。それでも風は爽やかで気持ちよい。トンネルに入ると、冷蔵庫に入ったようにひんやりする。夏が終わったばかりの9月だったので、まだまだ日差しが強く、冷気はここちよい時期だった。次のトンネルに入ると車内照明は消された。喚声があがったので天井を見上げると、真っ暗な車内で一際目立つイルミネーションが輝いた。会津鉄道では「光のファンタジー」と呼んでいるイベントだ。

目も眩むような渓谷上の鉄橋で停車して撮影タイムとなった

目も眩むような渓谷上の鉄橋で停車して撮影タイムとなった

トンネルを抜け、渓谷をひとまたぎ、と思ったら、鉄橋の真ん中で停車した。絶景なので、停車して撮影タイムとしたとのこと。これは何ヶ所かあった。

 

地元の古老風の衣装の人の音頭で始まったじゃんけん大会

地元の古老風の衣装の人の音頭で始まったじゃんけん大会

乗客が絶景に見とれているうちに、先ほどの風変わりな衣装の人が、じゃんけん大会をしますと案内し始めた。勝ち残ると、会津黒米、喜多方ラーメンなど会津地方の名産品がもらえる。 何回か行われたので、かなりの人が景品をゲットできた。私は黒米が当たった。

そうこうするうちに列車は芦ノ牧温泉駅に到着した。この駅は、和歌山電鉄の貴志駅と同じくネコの駅長がいることで知られている。名前は「ばす」という。しかし、当日は「巡回中」の札が出ていて、駅長は姿を見せないままだった。残念!

 

ネコ駅長は定位置はおろか駅周辺のどこにもいなかった

ネコ駅長は定位置はおろか駅周辺のどこにもいなかった

貴志駅の「たま」は駅長室でずっと「執務」しているのに、こちらは「巡回」が多いらしい。構内ではネコ駅長のグッズが多数販売されているだけに、ちょっとがっかりだった。また行かなくては・・・・・・。

会津鉄道のお座トロ展望列車だが、現在のトロッコ車両は老朽化が進んだため、2009年11月15日の運転を最後に引退し、来年からは新しい2代目のトロッコ車両がデビューすることになっている。今後が楽しみだ。

<関連ページ>
東北・東日本を鉄道の旅で楽しむ!

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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