機械式時計復活の立て役者
「私の作る時計は100年遅れています。しかし、今から100年後もきっとチクタクと音を鳴らし、止まらずに時を刻んでいることでしょう。これが機械式時計というものなのです」。ゲルト・R・ラング氏の言葉にこんな一節がある。彼の時計づくりへの情熱と信念がそこに凝縮されている。クォーツ時計が世界を席巻した1980年代に、時代に逆行するかのようにスイス伝統の機械式時計の復興に務め、1983年にクロノスイスを設立して独自の挑戦を続けたラング氏だが、ブランドにとって記念すべき成果が、1988年に発表された初代の「レギュレーター」だった。「レギュレーター」とは、もともと時計師が懐中時計の精度を確認したり、天文台の科学者たちが参照した大型の振り子時計を指し、センターに分針を配置し、12時位置に時間ダイヤル、6時位置に秒ダイヤルを独立させた独特の文字盤に特徴がある。これは、秒針が他の針と重なって見づらくなるのを避けるためのくふうであった。そのレギュレーター・ダイヤルを採用する世界初の腕時計を発表したのがクロノスイスだった。ミュンヘン郊外に昨年秋にオープンしたクロノスイスの新社屋の玄関ホールにも柱時計のレギュレーターが堂々と設置されているが、ラング氏にとって、まさにそれが機械式時計を象徴する存在になっている。
2008年最新作「レギュレーター24」、CH1121R。手巻き。ローズゴールド・ケース、径40mm。スターリングシルバー文字盤。世界限定3000本。189万円 |
さて、来日に際して彼が携えてきたのが、2008年バーゼルワールドで発表された最新作の「レギュレーター24」である。クロノスイス25周年、「レギュレーター」発表20年というダブル・アニバーサリーを記念するこの限定モデルは、12時位置の時間表示が、従来の12時間ではなく24時間に変わっている点がまずなにより特徴的。24時間いつも正確に時刻を表示する時計といった意味合いだろう。デザインは、初代「レギュレーター」以来受け継がれる典型的なスタイルを採用しながらも、ムーブメントについては、時計師ラング氏らしいこだわりが発揮されている。
「マーヴィン700」をベースにしたクロノスイス製キャリバーC.112手巻きムーブメント。大型テンプも特徴 |
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