男の腕時計/その他の国の時計

クロノスイス25周年記念「レギュレーター」

ドイツ発の本格機械式時計として人気を博すクロノスイス。先日東京でその25周年を記念するイベントが開かれた。オーナーで時計師のゲルト・R・ラング氏が来日し、最新作「レギュレーター24」が披露された。

執筆者:菅原 茂

機械式時計復活の立て役者

「私の作る時計は100年遅れています。しかし、今から100年後もきっとチクタクと音を鳴らし、止まらずに時を刻んでいることでしょう。これが機械式時計というものなのです」。ゲルト・R・ラング氏の言葉にこんな一節がある。彼の時計づくりへの情熱と信念がそこに凝縮されている。クォーツ時計が世界を席巻した1980年代に、時代に逆行するかのようにスイス伝統の機械式時計の復興に務め、1983年にクロノスイスを設立して独自の挑戦を続けたラング氏だが、ブランドにとって記念すべき成果が、1988年に発表された初代の「レギュレーター」だった。

「レギュレーター」とは、もともと時計師が懐中時計の精度を確認したり、天文台の科学者たちが参照した大型の振り子時計を指し、センターに分針を配置し、12時位置に時間ダイヤル、6時位置に秒ダイヤルを独立させた独特の文字盤に特徴がある。これは、秒針が他の針と重なって見づらくなるのを避けるためのくふうであった。そのレギュレーター・ダイヤルを採用する世界初の腕時計を発表したのがクロノスイスだった。ミュンヘン郊外に昨年秋にオープンしたクロノスイスの新社屋の玄関ホールにも柱時計のレギュレーターが堂々と設置されているが、ラング氏にとって、まさにそれが機械式時計を象徴する存在になっている。

クロノスイス「レギュレーター24」
2008年最新作「レギュレーター24」、CH1121R。手巻き。ローズゴールド・ケース、径40mm。スターリングシルバー文字盤。世界限定3000本。189万円

さて、来日に際して彼が携えてきたのが、2008年バーゼルワールドで発表された最新作の「レギュレーター24」である。クロノスイス25周年、「レギュレーター」発表20年というダブル・アニバーサリーを記念するこの限定モデルは、12時位置の時間表示が、従来の12時間ではなく24時間に変わっている点がまずなにより特徴的。24時間いつも正確に時刻を表示する時計といった意味合いだろう。デザインは、初代「レギュレーター」以来受け継がれる典型的なスタイルを採用しながらも、ムーブメントについては、時計師ラング氏らしいこだわりが発揮されている。

キャリバーC.112手巻きムーブメント
「マーヴィン700」をベースにしたクロノスイス製キャリバーC.112手巻きムーブメント。大型テンプも特徴
手巻きムーブメント、クロノスイス製キャリバーC.112のベースになっているのは「マーヴィン700」というオールド・ムーブメントだ。1952年に製造が始まり、やがてクォーツ革命によって姿を消し、現在は入手困難な機械式の名機である。伝統的な時計製造に敬意を払うラング氏は、クロノスイス創設期から、当時見向きもされなくなった機械式ムーブメントやストック・パーツの収集に情熱を注ぎ、その秘蔵のコレクションを初代「レギュレーター」はもとより、自ら作るさまざまなモデルに活用してきたことでも知られている。今回の「マーヴィン700」も、彼自身が発掘し、現代に甦らせたムーブメントの一つである。本物の機械式時計を愛好するファンに対してつねに価値ある「贈り物」を用意することを忘れないクロノスイスの良心とも言うべきものが、この特別仕様の希少なオールド・ムーブメントにもよく表れている。

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