それでも室内に入ると、それほど詰め込まれた感は感じない。開放的とは言わないが、明るいインテリアコーデュネートのせいもあって、何だか優しい気分に浸れる。全面これプラスチッキーな質感だが、安いものを無理に高く見せないのがいいと思う。安っぽいのではなく、安いからいいのだ。ディテールのデザイン(ドアトリムやシートアジャスター、センターコンソール)もよく、毎日使って楽しい実用品という感じが心地よい。シートの質感やカラーも秀逸だ。
運転席に座ってみて、改めて意外に思ったのが、Aピラーの角度。けっこう寝ている。MPV風のルックスだからもっと立っていると思ったが、そうでもない。でも、これはドライブ中に妙な背高感を味わわなくてすむというメリットはある。
↑ベースグレード。ソリッドカラーがよく似合う |
オートマチックモードで走ってみる。素なエンジンとの組み合わせだから、そもそも大きなシフトショックや加速感の居残りがあるはずもなく、それほど違和感なく走ってくれる。乱暴にアクセルを踏みつければそれなりにしゃくるし、スムースさを失うが、そんな乗り方をしても速く走れるクルマではないのだから、試すだけ無駄だ。インテリアの雰囲気に合わせてアクセ
ルをダラリジワリと踏んで流すのが気分のいい走らせ方だ。
もちろん、マニュアルモードを使ってそれなりに機敏に走ることもできる。できるけれど、ハンドルに集中することが決して楽しみに繋がらない。パンダに乗って楽しいのは、やはり3ペダルの操作感あってこそ、だと思う。そういう意味では、無理を承知でマニュアルモデルの設定も欲しかった、と言っておく。
↑リアの取り回しがいい分、通常時のラゲッジスペースは最小限に留まる |
それでもニューパンダのルックスは、“おお!イタリアのクルマが走っているな”という風には回りに映らないようだ。いろいろなコンパクトカーと遭遇したが、興味深く振り返ったのはシトロエンC2のオーナーであった。フロントマスクあたりがもう少し個性的だったらな、と思うのは無い物ねだりだろうか。
よくできた実用車という意味では、ニューパンダはしっかりとパンダを後継している。ただ、物足りないとすれば、もう1歩進んだ、割り切りの提案に乏しいところだろうか。パンダにはそれがあったのだ。