イタリア政府の対応
今回のフィアット・アウトの不振を重く見た政府は、自動車部門の業績回復のために何らかの援助を行う準備があることを発表した。ベルルスコーニ首相は5月16日に行われた記者会見で「市場経済の自由と市場における企業の平等性を守る範囲で、政府はフィアット・アウト社の救済を行う用意がある」と述べたが、フィアット・アウトの海外売却の可能性に関する質問には、自分が経営者ではないことを理由にノーコメントを貫いた。
他方では、まだ正式ではないがいくつかの具体的救済案が関連省庁や大臣筋から出ているようだ。その一つに、メタンガスや電気をエネルギーとするエコカーの開発改良に関する資金援助や購入者への補助金付与が挙げられる。
主にバスやトラック、タクシーなど商用車や公共交通機関への排ガス規制を強化することにより、必然的にエコカーの需要が高まることが明らである。ガソリンやディーゼルエンジンを搭載したフィアット車の販売が落ち込んでいる今、フィアット・アウトにとってエコエンジン開発に本腰を入れる好機と見ているようだ。
今後の動向
先にも書いたように、現在のところフィアット・アウト売却に関する可能性は否定的に見てよいだろう。フィアット・アウトの親会社であるフィアット社の財務担当最高責任者クレルモント氏も、GMへの売却話に関しては否定を続けている。
フィアットは、ある意味イタリアの象徴として認識されているので、どのような形にしろ存続させる方針がとられるとみてよい。
しかし状況はまだまだ流動的であることには変わりない。特に労働組合の力が強いイタリアだけに、3000人規模の人員整理は労使間に大きなしこりを残すだろうと予想される。
この業績不振を脱出するためには『売れる』新型車を一刻も早く発表するか、政府との協力関係を強めエコカー路線を大幅に拡大するか、それとも縮小分裂路線(残りのフェラーリ株売却等)をたどるのか。
IVECO社を救った手腕を買われフィアット・アウトの社長となったジャンカルロ・ボスケッティ氏にとって、ここ一番の腕の見せ所だろう。
なお、ボスケッティ社長の会見も早々に行われる予定だ。
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