元気いっぱいの魅力的なクルマを沢山提供し、イタ車好きの私たちを楽しませてくれるフィアット社。実はマジメに車社会と環境問題に関しても、いろいろな研究を続けているのだ。この問題に対して、現在のところ同社は二つの方向性を選択している。まず第一に、ガソリンやディーゼルを燃料とする従来のエンジンをさらに洗練させること。もう一つは、メタンガスなどを燃料とする内燃機関や、全く排気ガスを出さない代替推進装置を搭載したクルマを進化させることだ。
後者の分野では、現在商品化されている小型電気自動車セイチェント・エレットラをベースに、水素と酸素の融合により電気を得る燃料電池を搭載したエボリューションモデル、エレットラH2 fuel cellを開発中だ。
では、現在開発中のエレットラH2 fuel cellとはどのようなものなのか見てみよう。プロトタイプは基本的にセイチェント・エレットラの改良版であり、非同期三相交流のモーターや縮小されたバッテリーケースなどいくつかのパーツが流用されている。200バールに圧縮された水素は9リットル入りのボンベ6個に注入され、前部座席の背面部に取り付けられる。しかし近い将来、クルマとしての本来の居住性を取り戻すため、現在バッテリーケースが設置されているセンタートンネル部に取り付けられることになっている。
エレットラH2 fuel cellの気になるスペックだが、発表では48Vの電気エネルギーを作りだし最高出力7kWを発生する、となっている。バッテリーの電気と併用すれば、最高速は100km/h、0~50km/h加速は8秒を記録している。
水素ボンベのみの連続走行距離は100kmだが、バッテリーを併用すれば140kmに達する。また補給時間も約10分と、セイチェント・エレットラの4~8時間に比べて大幅に短縮されている。
しかし、現時点でまだ開発中ということもあり、技術面での努力が必要であることが分かっている。例えば、生産コストやサイズ、燃料電池推進器の性能などに関する問題が挙げられた。中でも、水素の生産や供給、貯蔵に関するインフラ整備は、最も早急に解決しなければならない問題だ。
公共交通機関や渋滞の激しい都市部を巡回する商用車など、「ファンな走り」から遠いクルマたちが燃料電池化されるのは大歓迎。しかし、現時点での燃料電池の性能を見る限り、全てのクルマにそれを採用させてしまうのは時期尚早だ、と思うのはドライバーのエゴなのだろうか。私たちユーザーが燃料電池車の走りに順応するか、燃料電池車がガソリンやディーゼル車の性能に匹敵するようになるまでは、まだまだ時間がかかりそうな気がする。
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