まさに全域高性能、高レスポンスの謳い文句に偽りはない
今回エンジンにおける変更・改良はまず、可変バルブタイミングの採用により、高回転の伸びを犠牲にせずに中低速トルクの向上を図った。これによって実用域から高回転域までフラットなトルク特性が実現されたのだ。さらにターボのコンプレッサーハウジング形状を最適化して低中速の性能向上をしたことや、コンプレッサー側の軽量化によって過給レスポンスを向上させたことで、レスポンスをコレまで以上に高めている。実はこれらの特性は、中速域の性能を重視するWRカーからフィードバックされたものだいう。リヤバンパーの下にはディフューザーが追加され、空力性能が高まった |
この後何度かウェット路面を走り、精神的にも相当参っていた頃、奇跡が起きた。時間が経つに従って、ノルドシェライフェ上空の天候は回復していき、午後はなんと完全なドライ路面となったのである。普段は、朝に雨が振ったらもうその日はドライにならないと言われるのだから実にラッキー。僕の日頃の行い、だろうか?
昼食後、今度は少しだけ不安を晴らしながらコースインした。前半は比較的タイトなコーナーが続く。このセクションでも、先にウェットを走った時に感じたレスポンスの良さと低中速域のトルクアップの恩恵が如実に分かる。
ハッツエンバッハと呼ばれる比較的タイトなセクションを過ぎると、一気に速度がのっていく。6速全開、メーターは200km/hを軽く超える。しばらく行くと、そこから直線が天に向かって伸びていく、だが実は登り切ったその先はブラインドの右コーナー、フラッグプラッツと呼ばれる場所だ。
もちろん減速しつつ入っていくのだが、それでもスピードは超高速域であることに変わりはない。思わず息をのむ。クルマには必然的に安定性の高さはもちろん安心感までが問われる。ランエボ9プロトタイプは、切れ味鋭いハンドリングで向きを変えると、しっかりと踏ん張っていることを伝えながら駆け抜けていく。
フラッグプラッツを過ぎて、いくつものコーナーをクリアしていくと、今度は地の底に向かって急降下していく長い下り坂が印象的。アデナウ・フォレストと呼ばれる場所だ。
ここは6速全開のまま谷底へと落ちていくように突き進む。するとサスペンションがフルバンプするのだから恐ろしい。しかもそこから先は谷底をアペックスとした左コーナーであるため、余計に緊張が走る。ただ、そんなことにビビっている間もなく、登りながら右のアウト側縁石にクルマを持って行きつつブレーキングと5速へのシフトダウンを行う。
なぜなら登り切った先がもう一度左コーナーだからだ。そして豪快にコース左側の縁石に左タイヤをのせていくようにして、その後さらに4速に落としての右コーナーと続いていくのだ。休むヒマがない。
こうした場所では当然高い安定性が求められる。そしてこの安定性の高さにこそ、ドライバーは信頼を寄せるわけだが、ランエボ9プロトタイプは実にしっかりと路面をとらえ続けており、安心してコーナーをクリアしていける。
こうして次々迫る高速のコーナーを何とかクリアしていきながら、先に走らせたMRに比べて大分安定性が高まっていることを知る。
関連サイト
次期ランエボ9プロト(ニュル編)ランエボ9プロト試乗記1
次期ランエボ9プロト(比較編)ランエボ9プロト試乗記3
次期ランエボ9プロト(進化編)ランエボ9プロト試乗記4