新型クラウンに搭載されたエンジンは、新たに置き換えられた2.5/3.0LのV6エンジンは、ともに優れたものだった。ストイキ直噴となったそれは2.5Lでは5速、3.0Lでは6速のATを介して後輪を駆動しているわけだが、例え2.5L+5ATでも印象はいい。3.0L+6ATという組み合わせは、確かにライバルに匹敵するだけの動力性能を生み、その上で高効率かつ省燃費を実現しているのだから、まさに同等以上といえる部分だ。
3.0Lにおける256ps/32.0kgmというスペックはBMW530の3.0L直6を確実に凌駕し、メルセデス・ベンツE320の3.2Lに対してもわずかにトルクが0.1kgm低いだけである。一方でクラウンは車重がBMW5シリーズよりもわずかに重く、メルセデス・ベンツEクラスよりは遙かに軽いため、動力性能は当然トップとなる。それでいて、燃費は他の2台に圧倒的な差を付けているのだから凄い。気持ちよさもしっかりあり、力強さも感じさせて低燃費…この部分に関しては見事な勝利といえる。
では運動性能はどうだろうか?
残念ながら走らせて率直に感じたことは「先代と何が変わったのか?」ということだった。先代クラウンはシャシーのポテンシャルがこのクラスとしては不足しており、こと直進性に関しては欧州車に大きく引き離されていた。路面変化に対してナーバスで、直進がしづらかったし、一度ボディの動きが始まるとそれが収まらず、乗員の目線は常にクラクラと動いてしまうという現象が起きていた。
今回の新型ではそれらを当然解消するための策が施されたはずだが…結果的には、先代よりも少し直ったという程度にしか僕には感じられなかったのだ。
まず高速道路を走ると、以前よりは乗員の目線の動きは少ない。フラット感は少し増している。特にアスリートの場合はロイヤルに比べてビシッとした乗り味があるため、路面の突起を通過する際には入力こそ大きいが収束は早い。が、実際には完全に入力が収束されずにわずかにボディの上下動が残る。しかもリアサスペンションが突っ張る感じが顕著で、例えばうねった路面を通過した後などにボディが沈み込んでいく時に、ストロークが途中で止まってしまう感じが強い。過渡域ではしなやかに沈み込むだろうな…と感じるのだが、それが突っ張る感じで止まってしまうのだ。また沈み込みが止まった時に当然わずかな伸び感が出るので、リア回りは常にポンポンと跳ねている感じがある。だから速度域が上がっていくと、跳ねる感じがフラフラしたものとして感じられる。さらにボディ全体が動き始め、クラクラした動きとなる。もちろん先代よりは改められているのだが。