昨年12月に発表された新型クラウンを、ついにテストすることができた。僕が注目したのはもちろん、先代から設定されている「アスリート」と呼ばれるグレードである。
今回の新型クラウンはメルセデス・ベンツEクラスやBMW5シリーズをベンチマークとして開発されたという。特にダイナミクスに関しては4年以上の歳月をかけて磨いた。もちろん欧州も走らせ、あのニュルブルクリンクでもそのままの姿ではないにせよ、テストを行ったそうだ。
トヨタが調べたところによると、クラウンのボリュームゾーンは60代だが、一方で30-40代のセダンユーザーは多くが欧州車に興味を示しているのだという。そこで今回のクラウンに関しては、欧州の同クラスをライバルとしてクルマ作りが行われた。中でも30-40代を意識したことがハッキリと見て取れるアスリートは、クラウンから派生したスポーツセダンといったところだろう。
では、果たしてクラウンはどれだけ変わったのか? ライバルとして設定した欧州車と比べてどうなのか? 早速レポートしたい。
まずスタイリングについて。この部分は先代と比べて大きく一新されたことが分かる。理由は搭載エンジンの変更による。これまで長きに渡って採用してきた直列6気筒エンジンから、時代の趨勢に従ってV型6気筒エンジンを採用したことで、フォルムは大きく変わった。全長で20mm、ホイールベースで70mmの寸法拡大を行いながらも、前後のオーバーハングはそれぞれ-10mm/-40mm詰められている。結果先代に比べ、フォルムは大分スポーティで、現代的なサルーンのそれとなったといえるだろう。
デザインに関しても、ドラスティックな変更が見て取れる。これまではいかにも日本の高級車を感じさせるエレメントが随所に感じられ和風を強く感じたが、今回はどちらかといえば現行セルシオに始まった流れを受け継ぐ感じで、フューチャリスティックな雰囲気すら感じさせるものとなっている。
トヨタは今後、レクサスを日本で展開するに当たって、トヨタとレクサスではデザインを差別化していくが、このクラウンの場合はそれ以前の作品であるため、セルシオ的なものを感じる仕上がりなのだろう。
現在のトヨタのデザイン・キーワードはヴァイヴラント・クラリティ(活き活き・明快)というものであり、一方レクサスのデザイン・キーワードはL-Finesse(先鋭-精妙の美)というものである。これらから考えると新型クラウンのデザインは、ヴァイヴラント・クラリティを表現したものとはいえない。むしろL-Finesse、あるいはそれらの融合すら感じるものとなっている。
理由はクラウンのデザインが、こうしたデザインの差別化以前に出来上がっていたからに他ならない。ちなみにNAIAS04(デトロイト・ショー)で発表された次期GSにもまた同じようなことが言える。GSもまたL-Finesseそのものとはいえないデザインを持つ。つまり2台は現在のようにトヨタ内において、第1開発センターとレクサスセンターに別れる以前の、旧第1開発センターで生まれたクルマなのである。だから2台にはデザイン的な共通性すらあるのだ。
とはいえクラウンは新たに生まれ変わったことを存分に感じさせるデザインを持つ。確かにメルセデス・ベンツEクラスやBMW5シリーズなどと比べても負けない個性とトレンド感を漂わせている。実際僕も、クラウンのスタイリングはこの手のサルーンとしてはかなり良いのではないかと思う。