搭載エンジンは2.4lのMIVEC。排ガス浄化の難しいガソリン直噴(GDI)をやめて、理論空燃比の標準型の燃焼制御となっている。とはいえ、現代のエンジンには動力性能だけでなく、省燃費や環境性能などの様々な要素が求められるが、その解決のカギがGDIから可変バルブタイミングのMIVECに委ねられたわけだ。
そんな経緯もあり、当然三つ星(超-低排出ガス認定)である。
最高出力165ps/最大トルク22.1kg-mという数値は2.4lクラスでは決して大きくない。実際、試乗した印象でも、排気量から受ける先入観よりおとなしく、時として非力にも思えた。しかし、高回転でも乗員に威圧感を与えないエンジンフィール、滑らかな変速と走行状況に応じた穏やかなドライバビリティをもたらすAT(INVECS-II、電子制御4速型)など、和やかなドライブを身上とするミニバンには似合い。グランディスの走りに上品な味わいを与えている。
一方、フットワークもミツビシのこだわりを感じさせる。サス形式はフロントがストラット、リヤがセミトレーリングアームを採用。形式的には前後とも先代グランディスと共通だが、クロスメンバーへのマウントなど構造面では別の設計となっている。
シャシー設計の要点として、安心感のあるハンドリングとしなやかな乗り心地が挙げられる。ロールなどの挙動を抑えた腰のあるストローク制御が特徴であり、高速や山岳路でも不安感はなく、ハンドルさばきも落ち着いたものである。
ただ、前後や横方向の微妙な動きに穏やかさが薄い。前後加速や遠心力をロールやピッチで吸収するような感じがあまりない。高い重心を硬い足周りで抑え込んでいるクルマにありがちな挙動がある。
最近のステーションワゴン型ミニバンとしては床面地上高が高い。そのお陰でフラットフロアも実現できたのだろうし、共通フロアパネルでFFと同じ全高の4WDの可能になっている。しかし、床面地上高の高さは重心高に影響する。もちろん、ドライビングポジションも高くなるので、車体の挙動は大きく感じられる。操安と乗り心地ではハンデが大きい。
そのハンデをして、ここまでまとめ上げてきたミツビシの技術力は評価できるが、もし低床低重心設計で開発されていたならば、この開発力がそのまま操安や乗り心地のアドバンテージに繋がっていた(だろう)と思えば、悔しさも覚えてしまう。
高い床面高に関して、現実的なユーザーのメリットとなるのはフラットフロアによるウォークスルーのしやすさくらいである。もちろん、セカンド&サードシートを収納して、フリースペースとして使う時にもフラットフロアは長所だ。グランディスのセカンドシートはチップアップ&前スライド収納、サードシートはバックレスト前倒&反転荷室床落とし込み収納を採用。ステーションワゴン型ミニバンでは比較的大きなスペースを得られるが、室内であれこれ作業したり、大きな荷物がとくに積みやすいわけではない。デコボコした床よりも使いやすいのも間違いないのだが、そういった用途ならばもっと室内高の余裕が必要であり、そうなれば1BOX型ミニバンから選んだほうが賢明である。
次世代を感じさせるほどのアドバンテージや提案がないのが残念。この辺りが「手堅い」と見る由縁だ。誤解されるといけないので、付け加えておくが「手堅い」という表現を使うのは、全体としては好印象だったためである。
なかなか考えて作っているし、全体的なバランスもいい。上品な内外装や乗り味も好感。これまでミニバンを乗ってきたユーザー、とくに先代グランディスから乗り換えるならばオススメである。また、趣味や実用で様々な物を載せるので、低床でデコボコした床面のクルマは使いにくい、かといって1BOX型ミニバンには抵抗があるという人にも「渡りに舟」だ。そして「ミツビシって変わったな」と直感させてくれるクルマでもある。ともかく、ディーラーで実車を見て、直感してみるといいだろう。