サードシートの収納方法はバックレストを前に倒すだけのシングルフォールディング方式を採用する。この収納機構がなかなか凝っている。バックレスト背面、つまり荷室側からストラップを引っ張るだけで簡単に収納できることもそのひとつなのだが、収納機構の構造が面白い。バックレストを前に倒すと座面は後ろに下がりながら沈み込んでいくのである。付け加えるならば、初代イプサムでも座面沈み込ませていたが、この時は前方に動きながら沈む、機構的にも分かりやすいタイプだった。
ウィッシュでイプサムと同じ方法を用いなかったのは、サードシート前部下にクロスメンバーが通っているため前方スライドで沈み込ませることができなかったため。
このクロスメンバーの存在は、ウィッシュの走りのこだわりを示す設計要点のひとつ。リヤサス周りの剛性を向上するために必要不可欠の存在であり、シャシー性能の向上のため、サードシートの収納機構で面倒を承知の上で設定されている。
セカンドシートはバックレスト前倒しのシングルフォールディング方式と座面引き起こしと併せたフルフラットのダブルフォールディングの二通りに使える。なお、ヘッドレストは最下部にセットした状態ではバックレストへの半埋め込み状態となり、ヘッドレストを外さずともフルフラット収納が可能。また、収納状態でヘッドレストが床面等に触れることがないように設計されている。
セカンドシート、サードシートともに左右分割方式して収納が可能であり、セカンドシートはロングスライド機構も左右独立して行える。
サードシート使用時の荷室は、奥行きがヴィッツなどのタウンカー型2BOX車と同等レベル。日常的な買い物には不便はない程度なのだが、このサイズのステーションワゴン型ミニバンとしては御の字。ついでにいえば、荷室幅一杯に床下収納ボックスを備えているので、クルマの常備品の整理もしやすく、使い勝手に優れた設計である。
シート地は鹿子編みを思わせる凹凸としっかりとした感触が特徴のもので、ゴージャスな趣ではないが、かっちりとした仕立ての良さが印象的である。レジャーなどでタフに使えて、なおかつ質感も両立できる表皮材といえる。ついでに言えば見た目にカジュアルなのが、軽快に走り、アクティブに楽しむレジャー志向のミニバンの印象を高めている。