苦しむメーカー系KERS搭載車両の戦い
KERSを搭載し開幕に挑んだルノーだが・・・ 【写真提供:Bridgestone Motorsport】 |
今年のマシンの大きな変革のひとつに新技術のKERS(カーズ)の導入があげられる。KERSとはKinetic Energy-Recovery Systemの略で、日本語で「運動エネルギー回生システム」と呼ばれるものだ。簡単に説明すると、ブレーキング時にディスクブレーキの摩擦で発生する熱エネルギーを回収し、そのエネルギーをバッテリーに蓄積し、オーバーテイク時などに使用するというものだ。
要は「電動パワーアシスト」のようなもので、理論上は80馬力程度のアシストを1周あたり6秒ほど使用できる。前の車をオーバーテイクする時、あるいは後ろから追われている時にKERSで貯めたエネルギーを使用することでスピードを上げて効果を発揮するというものなのだが、問題はKERSのバッテリーの重さである。40kgほどの重量増になると言われており、システムの信頼性も含めてKERS搭載が有効かどうかは微妙なところである。
今シーズンはKERS搭載は任意であるが、開幕戦には7台のマシンにKERSが搭載された。
<KERS搭載マシン(開幕戦)>
フェラーリ、マクラーレン
ルノー、BMW(ハイドフェルド車のみ) 計7台
<KERS非搭載マシン(開幕戦)>
トヨタ、ウィリアムズ、レッドブル、トロロッソ、
ブラウン、フォースインディア、BMW(クビサ車のみ)
開幕戦のKERS搭載車の最上位はルノーのアロンソの5位で、開幕から5戦での最上位はマクラーレンのハミルトンの4位と表彰台は一度も無いというのがKERS搭載車の現状である。エコロジーを考えて任意での導入が認められたKERSだが、メーカー系のチームもこの状況ではさすがに不利と判断しKERSを降ろした。第5戦スペインGPでのKERS搭載車両はついにフェラーリとマクラーレンだけになってしまった。来シーズンを見据えて搭載して開発を続けるか、それとも今シーズンの成績を重視するか?メーカー系チームのKERS搭載状況も世界的な不況下における今後の活動と微妙にリンクする。
KERS非搭載を決断し躍進中のトヨタに期待!
好調ぶりをみせるトヨタ 【写真提供:Bridgestone Motorsport】 |
開幕戦からKERS非搭載を判断し躍進しているのがトヨタである。メーカー系チームとしてはエコのメッセージ発信にもつながるKERSは(有効なのであれば)使用したいはずで、トヨタも既にテストではKERSのテストを繰り返し行ってきて開発は順調と伝えられてはいたのだが、実戦への投入は見送っている。
トヨタとしては一度も勝てていない事実から、今年勝てなければ来年の活動は考えなおさなくてはいけない状況にある。世界的な不況、自動車販売の不振、赤字が報告された業績も含めて極めて厳しい状況のF1活動の中で、まずは序盤戦での優勝に躍起になるのも無理はない。しかし、バーレーンGPではトヨタの2台がフロントロウを独占したし、マシンのポテンシャルは非常に高く、今はKERS非搭載で攻め時であるのは明らか。6月までにサーキットに君が代が流れることになるか?大いに期待して見守りたい。
新規定導入、新技術KERSの導入などF1シーンは大きく変化した。おそらく20年に一度くらいしか見られない勢力図逆転の不思議なシーズンの結末はどうなるのか?これから本格化するヨーロッパラウンドの戦いを大いに楽しんで見守りたいものだ。
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