21世紀を目前にした今シーズンのファッショントレンドのひとつ「80's」。80年代といえば、アライアに代表されるボディコンシャスシルエットや、クリスチャン・ラクロワなどのゴージャスなスタイルが思い出されるが、その中で今も変わらぬ存在感を放ちつづけているブランドとして「アルマーニ」がある。
今、コンテンポラリーアートで有名なグッゲンハイム美術館で「ジョルジオ・アルマーニ」展が10月末から開催され話題になっている。オープニングレセプションには、ミッシェル・ファイファーやリチャード・ギア、ロバート・デ・ニーロ、シンディ・クロフォードなどのセレブリティたちが勢揃い、華やかな幕開けとなった。
ブランド設立25周年の節目ともなる今回の展示は時間軸でその変遷をとらえるという方法でなく、アルマーニならではのキーワードによるテーマごとのプレゼンテーションになっているのが見どころ。例えばグレーとベージュを掛け合わせたアルマーニらしいカラー"グレージュ"のグループや、ランジェリーのディティールをアウターウエアに持ち込むという斬新なアイディアのグループ、非西洋――中国、インド、ポリネシアそして日本などの異文化取り入れたグループなど、このブランドの奥深さ、デザインバリエーションの広さを感じさせる内容である。また、ハリウッドとの密接なつながりを示す展示として、「アメリカンジゴロ」(80年)のリチャード・ギアや「アンタッチャブル」(85年)のケビン・コスナーが着た衣装や、アカデミー賞授賞式でスターたちが着用したドレス、タキシードなどが見られるのも非常に興味深い。
今回キュレーターを務めたジャーマノ・セラント氏によれば「この20年間、コンテンポラリーアートは常に人間の
"身体"と密接な関係にある。第2の皮膚ともいえる洋服がアート界においてクローズアップされるのは当然の流れ」(WWD紙より)とのこと。アルマーニ的アンドロジナス(雌雄両性)スタイル――ソフトな一重仕立てのジャケットは男性の身体をセクシーに演出し、伝統的な男物のスーツ生地を使ったシンプルなスーツは逆に女性らしさを強調し 、それぞれ80年代バブル期のシンボルともなった。20世紀ファッションにおいては革命とも言えるアルマーニ・スタイル。身体のラインを最大限に美しく見せるカッティングや、繊細な刺繍やビーズワークなどを見ているとやはりこれはアートなのだと思えてくる。その存在感は、もちろん今シーズンのコレクションにも失われることなく、21世紀にも永く輝きつづけるブランドになることを確信した今回の展示だった。
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