妊産婦や産後の人を診るのが「産科」。「婦人科」と書かれていたら妊娠は扱っていないでしょう。 |
かつてはほとんどが「産婦人科」でしたが・・・
時々「産婦人科って書いてあってもお産をやっていないところがほとんどなので驚きました」という声を聞きます。かつての日本では、子宮や卵巣を診る医師なら、ほとんどが産科も婦人科もおこなう「産婦人科医」でした。そう看板に出ていれば、ほとんどのところが産科診も婦人科もやっていて、お産も扱っていました。看板にそう書かれているのはその時代の名残なのです。
妊婦さんを診るのは「産婦人科」か「産科」
しかし今は、各領域が著しく進んできたため、どの分野もカバーしてくれる医師が減りつつあります。またお産が敬遠され、産科の担い手が減る傾向にあることは皆さんすでにご存じのおりです。
改めて整理してみますと、「産科」は妊婦、産婦、産後しばらくの人や胎児のトラブルを診る科で、「婦人科」は子宮内膜症や子宮筋腫、腫瘍など子宮や卵巣など生殖に関わる部分の病気を治す科です。不妊治療も婦人科に入ります。そして「産婦人科」は両方やっているという意味です。
産科医か産婦人科医ならお産を扱っている"可能性"があります。ただし妊婦健診だけおこなっている医師が、産婦人科と名乗っていることもあります。「産」という時を入れることには特に公の基準はありません。細かい診療内容はご本人に聞かなければわからないのが実情です。
産科を捨てない医師が増えて欲しい
海外では産科と婦人科は日本よりもはっきりと分かれていますから、日本もさらなる分化は避けられないでしょう。ただ、産科医、産婦人科医が減らないようにしないとお産の安全を守る人がいなくならないか心配です。婦人科とはっきり書いてあれば、お産は扱っていないでしょう。
現在の状況を見ると、病院では、まだ「産婦人科」と名乗っているところが一般的ではあります。しかし分娩中止の続出にともない「婦人科」もかなり多くなっています。平成20年に厚労省がおこなった医療施設調査によると、産婦人科があると答えた病院は全国に1,319施設、産科では177施設、婦人科では743施設となっています。