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モデル退職金なき時代に突入!マネープランはどうする

モデル退職金という考え方がレガシーデバイス化しているという、少しショッキングな話をしました。モデル退職金がない時代のマネープランはどうあるべきか考えてみます。

山崎 俊輔

執筆者:山崎 俊輔

企業年金・401kガイド

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モデル退職金はリタイアメントプランに便利だった

「モデル退職金」がない時代に、個人にとって老後の資金準備が成り立つかという問題があります。ひとりひとりの人生設計という目線から、具体的なマネープランはどうあるべきか考えてみます。

「モデル退職金」については、役立つ概念であることは間違いありません。たとえば、
1)目標設定:「老後のための準備が公的年金とは別に3000万円は欲しい」
2)退職金を考慮:「モデル退職金が1500万円は期待できる」
3)最終目標の確定:「それなら自分で貯めるのは1500万円だ」
というように段階的に計画を考える際に、モデル退職金が役立っているからです。

リタイアメントプランを考える際に必要なものとして「公的年金でどれくらい収入が得られるか」と「実際にどれくらい老後の生活資金が必要か」のイメージを作る必要はあります。公的年金のモデルと実際の年金生活者の生活水準の統計はありますので、「自分でどれくらい準備をするか」を考えることは可能です。

筆者はおおむね3000万円の目標を考え、個人の状況に応じて増やしたり減らしたりしていけばいいと考えています。少なくとも、何のイメージも持たずにお金を貯め始めるより建設的です。

しかし、3000万円を全額自分で貯めようというのはちょっと難しいと思います。このとき「退職金や企業年金がどのくらいの価値をもつか」というイメージを持つことが必要です。そうすれば「半分くらいは退職金に頼れそう」とか「3分の1くらいは退職金がカバーしてくれる」というイメージができ、自分の努力目標がはっきりします。

仮に1500万円不足であって、現在40歳ということであれば、20年の期間に毎年75万円というように目標が見えるわけです(実際には20年間に得られる利息もありますので、毎月2万円、ボーナスから15万円ずつ、つまり年間54万円程度でも同じ目標は実現可能です)。

もし、モデル退職金が役に立たないとしたら、こうした計算はできなくなってしまうのでしょうか?

モデル退職金なき時代のライフプランを考える

モデル退職金という概念がレガシーデバイス化した後のリタイアメントプランについては、正直まだ誰も答えを見つけていない段階だと思います。そこで筆者なりにライフプランにおける注意点をご紹介します。参考にしてください。

1)それでもモデル退職金は確認する
まず、「モデル退職金」についてはそれでも確認をしてください。社内規定をチェックするもよし、組合の発行物を確認するもよし、先輩や人事担当者、組合執行部に直接聞いてみるのもよいでしょう。

そのとき、モデルの金額だけでなく、制度の種類についても確認をしておきます。年金受取ができる企業年金の場合は「モデル年金額×支給年数(保証期間を含む)」を確認しておきましょう。

やはり、生活設計上はモデル退職金の存在が役立ちます。それが必ず約束されたものではない、としても、モデル退職金の額はきちんと知っておくことが大切です。

2)モデル退職金を「7割くらいは信じる」
しかし、モデル退職金の額を全面的に信じることはやめておくことにします。これが新しいリタイアメントプランのポイントです。金額は少なくなる(思っていたよりもらえない)可能性があることを念頭に生活設計を考えておく必要があります。具体的には「7割くらい信じる」がいいと思います。

あまり厳密な根拠はありませんが、給付を引き下げするとしても、40~50%ダウンというのはあまりありません。もちろんモデル程度は普通にもらえる場合もありますので、「7割信じる」ことから始めてみてはどうかと思います。

100%信じないことにして生活設計を考え、老後の準備を行い、退職金についてはもらえたものは全額余裕資金としてカウントすることもかまいませんが、この場合は現役時代にかなりの準備をしなければならず、あまりにも厳しい節約を迫られる恐れがあります。無理をしすぎないようにしてください。

3)頼りすぎず、頼らなさすぎず活用する
モデル退職金の意義や効果は薄れつつあるものの、まったく頼らないことは難しいと思いますので、「頼りすぎない」けれど「頼らなさすぎない」というバランスをもってモデル退職金とつきあっていくといいでしょう。

会社によっては、「今の退職金はこのくらい」という数値を一人一人に開示している場合もあります。401k(確定拠出年金)においてはサポートHPにアクセスすれば現在高はいつでもチェックできますし、社内のイントラネットなどで退職金額の照会や概算をするページを設けている会社も増えています。あくまで途中経過であって、60歳のときの受取額ではありませんが、活用するといいでしょう。

4)とにかく自分で貯めることをスタートさせる
最後のポイントは、「当てにならないと分かった以上は、自分で自分の老後に備える取り組みをスタートさせる」ことです。

毎月の金額がいくらでもかまいません。とにかく「貯め始める」ことが第一歩です。そして「これは老後のお金」と思って、できるだけ取り崩さない口座を持つことがいいでしょう。退職金や企業年金制度は、『会社が準備してくれている老後資金の専用口座』ともいえます。自分の手元にもそうした口座を作ろう、というわけです。

モデル退職金がなくなっても慌てなくていい?

モデル退職金がなくなった時代がなぜやってくるのか、またその時にマネープランはどうあるべきか考えてみました。後者についてはまだ検討が不足しているところもあります。

とはいえ、あまり深刻になる必要はありませんし、慌てなくてもいいと思います。最後にそれを一言指摘させてください。

まず、「モデル」がなくなることと「自分の退職金」がなくなることは違います。モデルはなくなったから、退職金の制度が消滅するわけでないわけです。「標準」がなくなって多様化(個別化)することは、今の時代において当然の流れであって、ある意味やむを得ないことだと思います。それを悲観的に捉えすぎないようにしてください。

また、「100が80に減る」のと「100が0になる」のとは全く話が違います。制度がなくなるわけではありません(倒産した場合などに全額保証されないという問題はありますが)。100を期待していて80だったということはあっても、会社は存続しており制度そのものが継続しているのであれば、100が0になるような恐れ方をする必要はないわけです。

方向性としていえば、会社も「今、あなたの退職金はいくら」という情報を在職中から示していこうという傾向はあります。モデルがなくなった時に必要なのは「それで、私は?」という問題に答える仕組みです。

一方で、30歳や40歳の時点で「今は100万円です」と言われても、「それは60歳の頃にはいくらくらいになる?」という問題が残りますので、「モデル的なもの」は細々と残っていくのではないか、とも考えています。

モデル退職金の動向について、毎日考えることは全く必要はありません。しかし、時々、老後のことを少し考えるとき、ちょっと意識してみてください。

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