ここにしかない、独特の空間
迫力と緻密さを感じさせるディスプレイ
ショーウィンドーがまずこんな感じ。白いフランスの皿はぱりんと割れた状態で、その脇には、銀色のアルミ箱(実は豆腐の型!)がまるで地面から生えてきたかのように、くねくねと増殖しています。どう見ても、売り物という感じはしません。このスペースはウィンドーギャラリーとして、店主・佐々木秀典さんが毎回テーマを決め、表現する場所。じっと眺めていると、奇妙でファンタジックなストーリーが浮かび上がってくるような気がします。(小さくですが、ちゃんとテーマの解説も出ています)。
なんだか分からない奇妙さに惹き付けられる
佐々木さんの繰り広げる不思議な世界観が気になったら、ちょっと中へ入ってみましょう。入り口には古着やボロ布が雑然と無造作に丸まっていたりして、ややぎょっとするかもしれません。仕立て屋かクリーニング屋か?、それとも誰かの作業中のアトリエ?といった風情。なんだか得体の知れない雰囲気で、かなり躊躇する店構えですが、お化けの館ではありませんので、ご安心を。以前の店を知っている人にも、また一味違って見えるかもしれません。より店主の個性が色濃く反映され、パワーアップしています。
モノが語り、主張する
「個体というより、空間を見せたいと思っている」と語る、佐々木さん。ひとつひとつのモノでもちろん販売もしているのですが、ディスプレイされた空間全体を作品として観てもらえると、また違った楽しみ方ができるのでは、とのこと。使うための道具ではなくオブジェとして、たとえ壊れていたり欠けていたりしていても、フォルムや質感が美しいものには、佐々木さんの手により、新たな命が吹き込まれます。
散らばったレンズやずらりと並ぶ鏡、幾何学模様のようなハンガー。
最近特に佐々木さんが気になっているテーマのひとつが「連続」。同じ素材や形のものが、生きている植物のように縦横無尽に広がっていく、インスタレーション的ディスプレイです。お店のブログではこれらについて解説されていることもありますが、やや詩的な独自の文体で、難解なような、当たり前のような、不思議な読後感。読むとさらにイマジネーションが深まります。
かわいいだけじゃない、陰りや儚さが潜む
こちらは”少女”を思わせるディスプレイ。かわいさの中に儚さや危うさなど、どこか謎めいたストーリーが秘められています。左上のちょっとイジワル顔の少女たちは、藤田嗣治の絵を切り抜いて、木の板にコラージュのように並べたもの。右下の天使は、後ろに白いテントのようなものが見えますが、この中にはミニチュアのドレッサーが置いてあり、サーカスのメイクルームを想像させます。「小さいものは、その世界に入りやすい」と佐々木さんはいいます。
色や質感の連続が心地良い
日常の道具である、古い器やガラスもあります。もちろん普通に使えるものですが、佐々木さんの目には違う物体に映って見えているようです。使い勝手よりもフォルムや手触りの美しさ。白いオブジェが一列に並んだり、重なったり。そのリズムを楽しんでいるかのようにディスプレイされています。モノ単体で見ると同時に、全体の様子をグラフィカルに眺めてみると、また新しい風景が見えてくるかもしれません。
遠い異国の私的美術館のような、摩訶不思議な空間ですが、決して怖いところではありませんので、興味のある方はぜひ訪れてみてください。
use(ユゼ)
東京都目黒区目黒4-12-2
03-6452-3727
現在は、金・土・日のみ営業 詳細はHPにて
http://use-11035058.blogspot.com/