今回は2004年税制改正の中から、相続税の計算に影響を及ぼす項目を2つピックアップしてお話してきたいと思います。
■特定事業用資産の特例の範囲拡大
これは自社株の相続税評価が10%減額される制度です。その範囲が拡大されました。概要は次の通りです。
(1)開始時期
2004年1月1日以後の相続、贈与から適用されます。
(2)趣旨
中小企業者の円滑な事業承継に配慮するためです。
(3)内容
相続発生時に取引相場のない株式の相続税の課税価格算入額を10%減額してもらえます。主な条件は5つです。
(イ)発行済株式等の総数の2/3以下に相当する部分で
(ロ)かつ3億円以下についての範囲内で
(ハ)発行済株式等の相続税評価額の総額が20億円未満であること
(ニ)被相続人・同一生計親族と特別関係者の持ち株割合が50%超
(ホ)持ち株割合が5%以上の親族である取得者が引き続き株式を保有し役員として会社を経営していた
(4)改正
今回の改正でこのうち3億円だった上限が10億円まで引き上げられました。
(5)事例。たとえば、株式の評価額の総額が18億円だったとしますと、2/3に相当するのは12億円です。改正後の10億円と比較し、低いほうの10億円の10%、1億円が減額となるわけです。 ちなみに改正前は3億円と12億円を比較し3億円が上限でしたから、その10%、3千万円の減額でした。従って改正後は、7千万円減額分が増えたわけです。
(4)小規模宅地等の特例と選択適用
これがまたややこしくさせているひとつでした。どちらか有利なほうの選択です。この小規模宅地等の特例は8割減もしくは5割減となり金額が大きかったわけです。ですから、今までは特定事業用資産の特例を使う人はあまりいらっしゃいませんでした。
今後は特定事業用資産の特例の上限が10億円に引き上げられましたので、この特例を選択した方が有利になる可能性もでてきました。
(5)対応策
相続時にこの選択を税理士さんと相談の上すすめて下さい。
さらにこの特例は贈与時にも影響します。特に昨年の改正で新しくできた「相続時精算課税制度」においては、どの時点で贈与するかという問題が出てきます。今後の税制の行方も踏まえながら判断することが必要になってくるでしょう。