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自宅を買って沈没しないために(前編)

不動産価格が下落し、都心のマンションを買うにはチャンスですが、不動産を武器に資産形成したいと思ったら、ある視点を持たなければ、不動産とともに没落してしまいかねません。

午堂 登紀雄

執筆者:午堂 登紀雄

ニューリッチへの道ガイド

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自宅を購入するチャンスだけど…

衰退する街を買ってはいけない
不動産不況と金融恐慌という複合的な不況によって、不動産価格が下がり、自宅マンションを購入しようという人には追い風が吹いています。

昨年秋からは外資金融機関のリストラで、高額所得者が住宅ローンを払えずに高額分譲マンションを手放しました。年初からは、大手製造業を中心にリストラが起こり、中価格帯のマンションを手放す人が増えました。実際、都心の優良区分マンションが数多く安価で放出されています。

したがって、投資物件だけでなく、都心の自宅マンションを安く買いたい人は、今年は大きなチャンスだと言えるでしょう。こんなご時世でも、割安な物件が出ればすぐ売れてしまう状況であり、このチャンスを狙っている目端の利く人がそれなりにいるということです。

しかし、安ければいいわけではなく、数百万円も値引きしてくれるからトクというわけではありません。それは元の値段に根拠が無く高かっただけですから。もう一つ、自分の収入で買える価格帯の物件を買おうなどと考えてもいけません。

同じマンションでも、資産価値のある物件と、ない物件があるからです。買えば不動産が残り資産価値になる、とは限らないからです。もしあなたが不動産を武器に資産形成したいと思ったら、自分の個人的な満足度ではなく、不動産の本質的価値、つまり「貸せる」「売れる」という尺度で検討する必要があります。


不動産の資産価値とは何か?

不動産の本質的価値とは、結論から言うと、「高く貸せる」「高く売れる」不動産です。

「家賃を払うのはもったいない。家は資産になりますから」という不動産業者のセールストークに乗せられて家を買う人は、不動産の本質的な資産価値というものがわかっていません。高く貸せるのも、高く売れるのも、「高く借りてくれる人がいる」「高く買ってくれる人がいる」ということが前提条件なので、そもそも「高額所得者が住みたいエリア、あるいは住んでいるエリア」しか成り立たないということです。

ということは、自宅を買う場合も、物件選びよりも街選びを優先させなければならないことがわかります。なぜなら、今後衰退していく街で高品質な物件を買ったところで、誰も借りてくれないし、誰も買ってくれないからです。賃料相場も売買相場も高い上質な街で物件を買わなければ、資産価値は空虚な妄想になってしまいます。

耐震性とか眺望とか、オール電化とか外断熱とか、そういう物件のスペックに惹かれて買う人は、不動産会社の典型的なカモです。インテリジェンスの低い顧客にはイメージ戦略が効きます。街に魅力のない物件だからこそ、物件そのものの特徴をうたうしかないのです。住みやすい街だという抽象的なイメージしかうたえないのです。

価値は低くても、価格が高いことの正当性を訴求することは広告テクニックによって容易に実現できます。これは売り手の立場に立ってみればわかることです。

では、高額所得者が集まる街とはどこか?一例を挙げると、東京なら恵比寿、代官山、麻布、六本木、赤坂、中目黒etc…。郊外型では二子多摩川、自由が丘、田園調布etc…。

こうした街に共通する要素が何かというと、まず街として多様性があり、シングル層だけではなく、ファミリー層とも同居でき、賃貸も売買も渾然一体として成熟しているということです。職場も近く、飲食や買い物もできる(ディスカウントストアはここでは買い物とは呼びません)、出産、子育て、医療、教育、文化、芸能、全てにおいて満たされる都市基盤が整備されている空間だから、お金持ちが集まる。こういう街こそが新陳代謝を繰り返しながら長期に繁栄する街です。

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