温泉/温泉を楽しもう

今年の温泉ベスト10 <2007年 対談後編>(4ページ目)

今年の温泉ベスト10!日本を代表する温泉研究家、郡司勇(温泉レポート)と、藤田聡(日本の名湯)両ガイドによる、年末恒例の特別対談!互いの温泉観も含め、今年も奥深い対談となりました。温泉好き必見です!

執筆者:郡司 勇

温泉オーナーとの対話

川原湯1
浴槽自体が源泉の足元湧出温泉の蔵王温泉 川原湯共同湯
<藤田> 郡司さんは以前から、温泉に行くと極力オーナーの方と話をされると言われていましたし、そうでないと気が済まないといわれていたと記憶しています。そうした時に、特にどのような話を、意識してされているのでしょうか?

<郡司> 温泉オーナーと会話というよりも、良い温泉にめぐり合うと、この温泉のどういう点が良いのか、そのオーナーに解説したくなります。この温泉の良い点は匂いなのか、色なのか、感触なのか、どこか他とは違う個性があり素晴らしいと感じると、それを伝えなくては気がすみません。

オーナーの温泉に対する話を聞くのではなく、こちらの感動した点や、硫黄含有量の多さ、鉄分の多さ、遊離炭酸の効果などを、私が考える効果や、感じ得た点や、他より勝った点を教えたくなります。また、使い方が正確に分からなかった時に、どのような使い方(循環、加熱、掛け流しなど)であるか聞くことがあります。

逆に、オーナーが私に向かって、この温泉はうんぬんと解説をされる場合は、あまり参考にしません。現在使われている温泉の状態そのものが全てであり、その感触を自分で感じたもので判断しています。それが全てです。日本一の療養泉だとか言われても、長年滞在して試す訳にも行きませんので、私としては現在の温泉そのものから感じる点しか興味が湧きません。
姥湯
景観が絶景の姥湯温泉

<藤田> 効能については、健康な人間は実際に試せないので、興味が持てない。現実に確かめることが出来ること、感じたことが全てとのお話は、まったく同感です。もちろん、効能や他の要素も知識としては勉強してますが、お湯の観察から得た感動の実体験に勝るものは、ありませんね。

私も昔は入浴後に温泉の話をしていたのですが、興味を示されないと感じることが多く、止めてしまいました。温泉で大感動して、熱心に話しているのに、相手が温泉に興味が無いと感じるのは寂しいものです。そうした寂しい経験を避ける為に、温泉については触れなくなりました。

なので、郡司さんがオーナーとの会話に積極的というのは、以前から伺っていたのですが、凄いなと思っていました。相手の温泉への興味と理解の深さには関係なく、温泉の本当の素晴らしさ主張していく、そうしないと気が済まないというのは、温泉が人間であったならば、聞いて喜ぶに違いありません。(笑) こういうと失礼に聞こえるかもしれませんが、本当に良い意味で、根っから純粋な温泉好きである、郡司さんらしい話と思いました。

ところで、お話を聞いていて、郡司さんの詳細な温泉解説を聞いた時の、オーナーの反応に興味を持ってしまったのですが、どのような反応が多いのでしょうか?

<郡司> 温泉の解説をすると、ほとんどの人はそうだったのかと納得したり、関心を示します。特にCO3の重量%がつるつるの指標になることや、HS H2Sの量で硫黄の感触が変り、白濁したり緑色になったりすること。また鉄分Feの量が、微妙な少ない数値の違いで緑色になったり、赤くなったりすることなど。分析表のその部分を示して説明すると、さらに分かりやすく、メモを取ったりする方もいます。

<藤田> やはり、そうですか。それでこそ温泉のオーナーですよね。私が話しかけた施設の人に、温泉への興味を感じないことが多かったのは、私が話かけた人がオーナーではなく、従業員であったからかもしれません。

最近、いろいろな雑誌で、入浴無料の特典があり、それを使う時にオーナーと思われる方と会話することがあります。不思議なことに、気前良く入浴させてくれるオーナーの温泉は、お湯も良く、温泉としての魅力に満ちているのです。無料だと知り、イヤな顔をするオーナーの温泉は、全然詰まらなかったりします。

もともと温泉が素晴らしいので、温泉の素晴らしさに感化されて、オーナーが素晴らしくなる場合と、その逆の場合と、両面あるように思います。最近、そうした傾向に気付いてからは、極力オーナーと会話したいと思うようになりました。

→次ページでは、ガイドが選んだ今年の温泉ベスト10の発表です!>>>
昨年の分はこちらです。今年の温泉ベスト10 <2006年 対談後編>
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