旅館/中国・四国の宿・旅館

瀬戸内の「隠れ島」からの招待状

リムジンクルーザーで行く隠れ島。至福の隠れ家に泊まれるのは一日4組。暗喩として神話の世界が隠された「海の道」の謎解きの旅へ。

井門 隆夫

執筆者:井門 隆夫

旅館ガイド

専用クルーザーで豊島へ。

港町「鞆の浦」から専用クルーザーで行く「隠れ島」に、知る人ぞ知る「ヴィラ」がある。
海の守護神「宗像三女神」の名前がついた離れが4棟。可愛らしいマーガレット(除虫菊)のお花畑の中に立っている。レストランでは、旬の魚介を使った創作和食のディナー。夏なら海風に吹かれながらテラスでのアフタヌーンティーも楽しい。
鞆の浦
昔ながらの「常夜燈」がシンボルの鞆の浦港。隠れ島への玄関口だ。
この島の名は瀬戸内海に浮かぶ「豊島(とよしま)」。ヴィラの名前は「ヴィラ風の音」。鞆港の桟橋にリムジンクルーザーが迎えにきてくれる。
鞆の浦へは少し早めに着くといい。木造の酒蔵や竜馬ゆかりの家などが路地裏に所狭しと並ぶ街並みは一見の価値がある。待合所となるカフェでエスプレッソをいただいてから船に乗ろう。この港は、古代から「潮待ち港」として栄え、朝鮮通信使も立ち寄った。名物の保命酒は賓客をもてなす際に供された薬用の銘酒である。隠れキリシタンや蘇民将来伝説と、古代から中世にかけての大陸文化の名残が色濃く残る港町で、この街を紐解くだけで本来は一日をゆうに費やす。宮崎駿監督もこの町に籠もり、映画「崖の上のポニョ」を製作した。
15時、我々を乗せた真っ白なクルーザー「さつき」が、漁船の中を、颯爽と海へと繰り出していく。ここから先は、チェックイン客のみ。豊島には、複数の島々から成る上島町のコミュニティセンターがあるだけ。そこはかつて小学校の敷地だった。不便さは豊島をほぼ無人の島に変えた。その分、静けさが残る野性の島でもある。

豊島の桟橋
豊島の桟橋から、ヴィラまでの蝶が舞う小道。
こんなに気持ちのよい海風を受けるのも久し振りだ。海風に髪をなびかせながら、40分。「さつき」は、豊島の小さな桟橋に着く。桟橋にはコンシェルジュが迎えに来てくれている。荷物はカートで運んでくれ、私たちは、花々の咲く階段を上ろう。畑ではゆずを栽培している。隠れ家ヴィラとはいえ、自給自足に近いワイルドなリゾートである。ウェルカムドリンクは、地元のみかんジュース。めちゃくちゃ美味しい。
その後、レストランから少しずつ離れて建つヴィラへ。ファミリー向けの「市寸(イチキ)」、天蓋付きベッドの「多岐津(タギツ)」、テラスにソファセットのある「奥津(オキツ)」。海の女神、宗像三女神のほかに、海神ワタツミの娘「豊比売(トヨヒメ)」から名付けた「豊(トヨ)」の4棟。市寸と豊のテラスには桧の露天風呂が付いている。ドングリの木に囲まれたそれぞれ個性的な棟はいずれからも海を一望し、部屋にはテレビも時計もない。BOSE社のオーディオでお気に入りのサウンドを流し、日々の垢を洗い落とそう。屋内は全室禁煙。
さて、部屋に入ろう。
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