外国人絶賛の“演出”旅館～柚子屋旅館

仕組まれた動線をたどる。

ほの暗く、ライティングのマジックが効いたロビー。二階の客間へは、奥にある中庭から案内される。

「おこしやす」。
“ぎおんさん”の愛称で親しまれる「八坂神社」石段すぐ脇の暖簾をくぐり、打ち水された石段を上った旅館玄関を入ると、京都弁の元気のいい挨拶が飛んできます。
柚子屋旅館。
外食業が再生プロデュースを行い、運営する旅館として注目を集め、半年経ちました。以来、日本情緒を凝縮した設えや演出が、外国人はじめ、味にはうるさい京都人にまで評価されるようになってきたようです。初夏の一日、柚子屋旅館に泊まってきました。

玄関脇には、京都弁で「おくどさん」と呼ばれる竈。ロビーの柱には、千社札があたかも昔からあったように無数に貼られています。

土間のロビーには、おくどさん。ダウンライトの下に照らされているのは、季節の野菜。そして、ロビーの奥には、中庭の緑が額縁の絵のように輝いています・・・。
なにぶん、ファーストインプレッションの作り方がうまい！。
通常の近代的ロビーの旅館にはない、演出のうまさです。この辺は、素直に外食に学ぶべきところだと思います。
一杯のお茶をいただき、チェックインを済ますと、お部屋へ案内されます。その仕方も面白い。ロビーから、一度中庭に出て、あらためて「旅館」の小さな玄関の木扉をがらりと開け、お部屋へと案内されるのです。もちろん、この玄関は再生時に増設したもの。雨の時は番傘を差すそうです。

中庭を囲み、回廊になった二階。この周りに客室が配されている。

これも新たに増設したであろう忍者屋敷のような狭い階段を上ると、中庭を囲むように二階が回廊となり、その周囲に11室の客間が配置されています。お部屋はごくふつう。でも、私の部屋は、八坂神社の参道に面し、境内の緑まで借景として楽しめました。
年じゅう柚子湯となるお風呂（男女別、ただし内鍵もかかる）は一階です。こちらへは、到着時とは別の内階段を使って下りていきます。同じ一階には、外来客も来る京ごはん処「一心居」がロビー脇にあるのですが、宿泊客と外来客の動線をうまく分けています。小さな空間なのに、実にうまく動線を設計してあり、感心しきりでした。
さて、いよいよ、注目のお食事です。